いや~、すみません。つい先日こんなアルバムを買ってしまいましてね。廃盤CDが投売りされているところで入手したんです。ジャケットや
“The King”という名前を見れば、この人がエルヴィス・プレスリーを意識しているのは一目瞭然なんですが、歌もモロにそれです。見事にエルヴィスしてます。まあ、そんな歌い方で、曲もロカビリー調だったりしたら、僕も別に買おうとは思わないんですが
このアルバムの狙いはそんなところにはないのです。
“Graveands”という“Graceland”にかけたこのタイトルが意味するものは、既に故人となったアーティストの曲を、このThe Kingというアーティスト(?)が エルヴィスそっくりの歌い方で歌うというものなんです(笑)。フランク・シナトラからNIRVANAまで、あらゆるジャンルの名曲をエルヴィス(のそっくりさん)が歌っているんです。
言ってみれば
悪趣味極まりない企画で、
亡くなったアーティストに対する冒涜です。ジミ・ヘンドリックスの“Voodoo Chile”をエルヴィスの声で歌われたりすると、頭クラクラしてきますよ・・・。
この罰当たりめ!そんなもん廃盤になって当然じゃー!!
・・・いや、もう最高ですよ(笑)。だってメチャメチャ上手いんですから。おもわず “カッコ良い”と漏らしてしまった事度々・・・。先ほど “The Kingというアーティスト(?)” と “?”を付けてしまいましたが、
ここまでいくとアートですね。まじで。企画自体はふざけたものかもしれないけど、真剣に(でも楽しみながら)作られたものである事は一聴して分かりますし。ここでは敢えて全曲解説はしませんが(時間が足りないから・・・)、僕がカッコ良いと思ったり、笑ったりしたものだけ挙げていきますね。
アルバムのオープニングは
NIRVANAの“Come As You Are”、
Joy Divisio-
n、
ティム・バックリーと続いて4曲目に出てくるのが
THIN LIZZYの“Whiskey In The Jar”、厳密に言えばこの曲自体アイルランドのトラッドソングが元になっているので、LIZZYのやつもカバーみたいなものですが、ここはまあ勘弁してやりましょう。Metallicaもこの曲演ってましたけど、あれは殆んどコピーみたいな感じでしたよね。ここではダンサブルにアレンジされていて凄い良い感じです。フィドルのソロもグー!僕なんかはTHIN LIZZY/フィル・ライノットの曲を持ってこられるだけで点数が甘くなってしまうんですが、ライナーによるとこのThe Kingというシンガーはアイルランドのベルファスト出身らしいんですよ。もしそれがホントだとすれば、この選曲も納得ですね。ベルファストのような土地で、こんな呑気な事やってたんでしょうか?
5曲目は
マーヴィン・ゲイの“I Heard It Through The Grapevine”・・・今 おもわず “Gravevine”と打ってしまいました(笑)、この曲もセクシーで良いですね~。
SWEETの曲を挟んで、7曲目は悲劇のバンド
Lynyrd Skynyrd の“Sweet Home Alabama”、この曲なんかはエルヴィスが歌っているのも想像しやすいと思いますが、素直にカッコ良いですね。ジョン・レノン、バディ・ホリーのあとに続くのは
スティーヴ・マリオットの“All Or Nothing”、これはもう名曲ですからねぇ。それをエルヴィスが歌っているんですから、ホント感動しますよ(笑)。
T-REX、
オーティス ・レディングに続いては
ジャニス・ジョプリンの“Piece Of My Heart”・・・、このアルバムは色々“小ネタ”も挟んであるんですが、この曲の前に歓声が入っているのは、有名なモンタレー・ポップ・フェスティバルバージョンという事なんでしょうかね(笑)。続く
ボブ・マーリィ “No Woman No Cry”の最後、“Wise men say~♪ No woman No Cry♪”って何やねん(笑)。
エルヴィス・プレスリーと
ジミ・ヘンドリックスという誰が考えても無茶な組み合わせも、このアルバムでは強引にやってしまうんです。実に見事に。そして次は
AC/DCの“Whole Lotta Rosie”、いよいよ佳境に入ってまいりました。エルヴィスがボン ・スコットの曲歌ってるんですよ?これを最高と言わずとして何と言いましょう(笑)。
“42-39-56~♪”のところなんて鳥肌立つほどカッコ良いですよ。いや、“鳥肌立つ”ってのはウソですけどね。この曲にも、歓声やエルヴィスのコンサートのオープニングでも使われていた“ツァラトゥストラかく語りき”が挿入されていて、壮大なLIVEバージョンになっています。LIVEバージョンもどきに。そして本編最後は
フランク・シナトラの“New York New York”、この曲やオーティスの“Dock Of The Bay” といった曲を聴くと、この人がホントに歌が上手いというのが分かるんですが、どうやったって認めたくない人は認めたくないでしょうね(笑)。シナトラの曲が終わると、シークレットトラックとして、
エルヴィス・プレスリーの“That's Alright Mama”が出てくるんです。ついに!
これはもう完璧ですね。アコースティックギターをバックに、スコッティ・ムーアに向かって何か言っているセリフも入っているんですが、これは
“'68 Comeback Special”バージョンという事でしょうか。
どうですか~、“全曲解説はしない”とか言っておいてここまで長く書いてしまいましたが(まったくの予定外・汗)、凄いでしょ~。・・・でも、これで安心してはいけないんですよ。日本盤には更に驚くべきボーナストラックが入っているんですねえ。2曲のボーナストラック(ありがた迷惑)のうち、1曲は
INXSの“Suicide Blonde”で、これはまあ普通なんですが、もう1曲が
“Come As You Are”の
日本語バージョン(笑)。やめてくれ~。これがまたしっかり日本語の練習を積んだみたいで、ちゃんとした日本語に聴こえるんです。原曲で“Memoria~♪”と歌っているところは “お~もい~で~♪”みたいになってまして、これはまじで頭痛がしてきます。親には聴かれたくないっていうか(笑)。ギターの音もちょっとアコースティックぽく変えてあったりするので、これは“MTV Unplugged”バージョンという事になるんですかね。妙に芸が細かい(笑)。
まあ、ハッキリ言って これこそ
企画盤と呼ぶのに相応しいアルバムで、
イロモノ以外の何物でもないと思うんですが、これがやけに上手かったりするのでこっちとしても困るんですよね(笑)。僕もこういうアルバムを喜んで紹介している訳ですから、 “企画もの好き”という風に言われても否定できませんが、
定価だったら絶対買いませんでした!数百円だったから買ったんです!・・・でも、聴きたいとは思ったでしょうから、全然説得力ありませんねえ。・・・たまにはこんな感じのアルバムも良いですよね(笑)。真面目なアーティストのアルバムや、そこに含まれるメッセージを理解しようとして真剣に聴いてばっかりじゃ疲れるじゃないですか。・・・僕はそういう聴き方しないんですけど(笑)。こういう
脱力系のアルバムや曲があっても良いと思うんです。ホントに良くできてるし、聴いてて楽しいですから。・・・実を言うと、今日はこのアルバムをダシにして、そういうカバー曲を他にも紹介しようと思っていたんですが、予想外にこのアルバムの話に入り込んでしまいまして~。なので、明日以降、また続きをやりたいと思います(笑)。だって面白いんだもんね。