1995年にリリースされた、
ドク・ポーマスのトリビュートアルバムです。前回の
ジミー・スコットからの繋がりで、今日はこのアルバム。・・・ドク・ポーマス、1940年代からソングライターとしてのキャリアをスタートさせた伝説的な人物ですが、ジミー・スコットの再デビューに深く関わった人でもあるんです。1991年に亡くなったドク・ポーマスは、生前からジミーを表舞台に復帰させようと奔走していましたが、彼のその望みは生前には叶わず、自らの葬儀の際にジミーがある曲を歌ったことがきっかけとなって実現したのです。葬儀に列席していたサイアー・レコードの社長が、ジミーの歌を聴いていたく感激し、契約を申し出たんです。感動的な話じゃありませんか(涙)。・・・とか何とか言ってますが、僕はその当時(ドキュメンタリーを観るまで)、そんな話は知らなかったし、ドク・ポーマスの名前も、このトリビュートアルバムが出た時に知りました。相変わらずいい加減な奴で、どーもすみません。・・・まあ、ドク・ポーマスの名前は知らなくても、彼が書いた曲は、耳にしていたんですけどね。・・・って、完全に言い訳モードに入ってますが(笑)、例えば、エルヴィス・プレスリーの
“Little Sister”もドクのペンによるものだし、何と言っても、あれが有名でしょう。
“Save The Last Dance For Me”
(ラストダンスは私に)。・・・エルヴィスは、それ以外にもドクの書いた曲をいくつも取り上げているし、未だに彼のペンによるものだと気づかずに聴いている曲は、山ほどありそうです。何せ、生涯に1000曲ほど書いた人らしいですからねえ・・・。
・・・そんな偉大なソングライターに捧げられたアルバムなので、参加メンバーも非常に豪華で、その人達自体、“偉大なソングライター”と呼ばれているメンバー・・・例えば、
ボブ・ディランや
ブライアン・ウィルソンのような人も名を連ねています。それだけで、ドク・ポーマスという人が、如何に凄い人物であったか想像がつくというものですが、ボブ・ディランが作曲家としての壁にぶち当たった時、エルヴィス・プレスリーが作詞に行き詰まった時に助言を求めたのが、このドク・ポーマスなんです・・・なんだそうです。・・・こういった話は、すべてこのアルバムのライナーに書いてあって(ドクの友人でもあったジェリー・ハーシーというライターによるもの)、各曲の解説も非常に素晴らしいものなので、“こんなふざけた文章よりそれを読んで下さい”という感じなんですが、それ言っちゃうと余りにも無責任ですよね(汗)。・・・それでは、気に入っている曲をいくつか挙げることにしましょう。あとはやっぱりアルバムのライナーを読んでもらうということで(笑)。いや、聴いて絶対に損はしないアルバムですから。
オープニングナンバーは
Los Lobosによる
“Lonely Avenue”、レイ・チャールズが演っていたこの曲がまず良い。
セサール・ロサスの歌もギターの音もカッコ良い。Los Lobosって、何でこんなにカッコ良いんでしょう?あんなにおっさんなのに。3曲目に出てくるショーン・コルヴィンの
“Viva Las Vegas”も良いですね。エルヴィスが演っていた陽気・・・と言うか、能天気な雰囲気は微塵もなくて、えらく暗いんですが、これが良いんですよ。(ライナーにも似たような感想が書いてありましたが)派手な電飾でカジノなヴェガスじゃ全然なくて、壊れたネオンサインがあるようなヴェガスの暗い通り、安ホテルを連想させます。行ったことないけど。続く
ジョン・ハイアットの
“A Mess Of Blues”も中々ですが、それに続くルー・リードの
“This Magic Moment”が良い。トリオによるシンプルな演奏ですが、ルー・リードのギターが良いんですよね~。決して上手いギターだとは思わないんだけど、良いんですよね~。 “エレキギターの上手い使い方知ってるなぁ・・・”といった感じで。・・・ルー・リードの次に
B.B.キングが出てくるというところが、このアルバムの良いとところ、凄いところで、その
“Blinded By Love”がまたロマンチックなんですわ(・・・B.B.は、ドク・ポーマスの書いた歌詞を読んでいるうちに、泣き崩れたことがあるんだそうだ)。10曲目に出てくるロザンヌ・キャッシュの
“I Count The Tears”も良い。曲が良い。胸キュンPOPS(笑)。・・・ドク・ポーマス、元々はブルースシンガーとして、その音楽キャリアをスタートさせた人らしいですが、そのルーツを感じさせるブルージーな曲とこの曲のようなPOPS、更にはロマンチックなバラードまで書けるところが凄いと思いますね。・・・亡くなるわずか2週間前に書いた曲を、親友の
Dr.ジョンが演った
“I'm On A Roll”も当然のように素晴らしい。“声でかいなぁ・・・”という感じの
ソロモン・バーク、“妙に元気だなぁ・・・”という感じのブライアン・ウィルソンに続いて、ラストナンバーは、やはり
“Save The Last Dance For Me”。誰かがこれを演らなければ、このアルバムは締まりません。アーロン・ネヴィルによるこの曲は、それはもうスイートです。バックでは、
スティーヴ・クロッパーがギター弾いていたりします。
・・・そんな感じのアルバムで、“気に入っている曲を・・・”と言いながら、収録曲の半分以上挙げてしまいましたが(笑)、それぐらい素晴らしい曲と演奏が詰まっているということです。“トリビュートの鑑”みたいなアルバムですね。このトリビュート盤への参加を希望していたアーティストは、後を絶たなかったそうです。凄いですねぇ・・・。