昨日行われたF1第15戦イタリアGP、優勝したのは2番グリッドからスタートした、地元フェラーリの
ミハエル・シューマッハー、ポイントリーダーのアロンソと並ぶ今期6勝目、自身通算90勝目となる完璧な勝利でした。アロンソがレース終盤、エンジンブローによってリタイアし、ノーポイントに終わったことから、ドライバーズランキングのポイント差は“2”にまで縮まり、コンストラクターズ争いではついにフェラーリがルノーを逆転、両タイトル奪取に向け、フェラーリ陣営は完全に勢いがつきました。結果的にはリタイアに終わったものの、アロンソの走りも見事でした。予選終了後アンフェアな裁定を下され、10番グリッドからのスタートを余儀なくされた彼でしたが、レース終盤には3番手/表彰台圏内まで上がってきましたからね。これもチャンピオンの名に相応しい走りだったと思います(GP出走3戦目にして早くも表彰台に登った、BMWザウバーのロバート・クビサも見事でしたが)。3戦を残してポイント差は“2”と、近年まれに見る接戦が展開されています。開幕直後に“2006年のF1は面白いんじゃないですか~?”と期待した以上のシーズンになってくれました。
・・・そして、昨日のイタリアGPは、チャンピオン争いとは別のところでも注目されていたイベントでした。ミハエル・シューマッハーが自身の去就について明らかにするとしていたGPでしたから。“引退か?それとも現役続行か?”先週末まで様々な憶測が飛び交いましたが(来年1年休んで、マクラーレンで復帰なんて噂まであった)、レース後の記者会見で、彼の口から“今シーズン終了後に引退する”と発表されたのです。今年のモンツァサーキットは一種異様な空気に包まれていたような感じで、サーキットに詰め掛けた観客も、テレビで中継を観ている人達も、どこか彼の引退を予感しているような雰囲気がありましたが、それが現実のものになってしまいました。個人的には、“あと1年走る”というセリフを(かすかに)期待していたんですが、レースに勝ったあとのチームスタッフに対する態度・・・ホントに1人1人抱きしめて回っていた彼や、目にうっすらと涙を浮かべて、しみじみと彼の勝利を噛みしめていたかのようなジャン・トッド、そしてその隣りに居た奥さんのコリーナを観ているうちに、“あぁ、これは辞めるつもりだな・・・”と思いました。・・・誰がどう見ても、彼のスピードは依然トップクラスのままで、体力的にもまだまだやれる人だと思いますが、彼自身が時代の流れを意識して、ここでリタイアすることを決めたんですから、仕方ありません。
・・・ミハエル・シューマッハーというドライバーは、最後の最後まで(と言っても、まだ現役ですが)好き嫌いの分かれるドライバーであったような気がします。彼のレースに対する気持ち、勝利に執着する姿勢が、どうしても好きになれないという人が(同業者の中にも)ずっと存在していて、そういう人達から見れば、彼は“単なるレース馬鹿”“記録に残っても記憶には残らないドライバー”ということになるんでしょう。でも、僕は決してそうは思いません。記録については最早何も言うことはありませんが、F1の記録という記録をすべて塗り替え(最多出走はリカルド・パトレーゼが残した記録にわずかに及ばないことになりますが)、7度のワールドチャンピオン獲得、通算90勝と、この先決して破られることはないであろう金字塔を打ち立てています(これは勿論、8度目と9○勝に伸びる可能性を含んでいますが)。彼のことを“レースしかない奴”と言う人には、“だから凄いんだ!”と言いたいですね。モータースポーツにここまですべてを捧げた人は、彼の他に何人いるでしょう?ホント、数えるほどだと思いますよ。勝てるチームの勝てるクルマに乗ってチャンピオンになったドライバーは何人も居ますが、彼のように勝てるチームを自ら作り上げることが出来るドライバーというのは極めて稀でしょう。ミハエル・シューマッハーは、F1やモータースポーツの基準を新たなレベルに引き上げた功労者であり、偉大なドライバーの1人であると思います。“セナの走りに較べると・・・”というのも良く耳にした意見ですが、僕はシューマッハーが見せた走り・・・信じられない走りに感動したことが何度もあります。今、思い出したのは、彼が初のタイトルに輝いた'94年のヨーロッパGP。ギアが5速にスタックしたままのクルマで、彼は2位表彰台に上がっています(表彰台では、まるで勝ったかのような喜びようでした・笑)。他にも沢山あります。決勝レース当日の朝にお母さんが亡くなったというのにレースに出場して、弟ラルフと凄まじいバトルを展開したシーンも凄く印象に残ってますね。・・・こうして挙げて行くとキリが無いんですが、彼が居なくなって初のGPとなる2007年の開幕戦になって、F1界と世界中のファンは、改めて彼の大きさに気づくような気がします。
・・・とは言え、今シーズンはまだ終わっていません。FIAのイジメ(余計なことはして欲しくないですよね)にも負けず頑張っているアロンソには悪いんですが、僕はミハエル・シューマッハー応援団の一員になると決めました。今年現役を引退した、もう1人の偉大なスポーツ選手、ジダンのようなヘマはせずに、最後まで完璧に決めてもらいたいと思います。“美しすぎる終わり方”でも良いじゃないですか。その完璧さこそがミハエル・シューマッハーというドライバーなんですから(最近、ミスも目立つようになったけど・・・)。どうせなら3連勝で行こう!
・・・ということで、F1は再びアジアにやってきて、まずは中国GP、9月29日開幕!