ブリティッシュブルースの父
ジョン・メイオールが、数々の豪華なゲストを招いて作ったアルバムです。オーティス・ラッシュのようなベテランから、ジョニー・ラングのような若手、シャノン・カーフマンのような超若手まで、ジョン・メイオールの元に駆けつけて、素晴らしい演奏を披露しています。色んな人が集まってくれて、彼もやはり嬉しかったんでしょうね。嬉しさが顔に出ています。→
僕が最初にジョン・メイオールの音楽を聴いたのは、やはりエリック・クラプトンが参加していたBluesbreakersのアルバム
“Bluesbreakers With Eric Clapt-
on”でしたが、あのアルバムは、全然クラプトンファンではなかった僕が聴いても、文句のつけようがないぐらい素晴らしくて、“これは参ったなぁ、もうこの時点でロックギターの音は完成されていたんじゃないか”なんて思ってしまいました。・・・あ、素晴らしいと思ったのは、クラプトンのギターです、ジョン・メイオールはここでは置いといて(笑)。まあ クラプトンは、この“Along For The Ride”には参加していないので、彼の事をこれ以上書こうとは思いませんが、
“レス・ポールをマーシャルに繋いだクラプトンは凄かった”という事で。
その次に聴いたのが、
ピーター・グリーン時代の
“A Hard Road”で、おもいっきりベタな展開なんですが(笑)、ここでもピーターのギターが印象に残っただけで(ただ 先日も書いた通り、そこからいきなりピーターのファンになった訳ではないのです)、ジョン・メイオールの歌は結構どうでも良かったです(笑)。どうでも良いと言っては、失礼にも程があるんですが、“渋い”とか、“味がある”と言う事はできても、お世辞にも“上手い”とか、“凄い”とは言えない歌だと思うんですよね。
“しょぼい”というのが一番合っていると思うんですが、どうでしょう?“A Hard Road”では、ピーターの方が既に歌も上手かったんじゃないでしょうか。
・・・まあ、ジョン・メイオールのした事で重要なのは、決して彼自身の演奏云々ではなくて、彼がクラプトンのような若いミュージシャン達に、当時のイギリスではまだ珍しかった黒人のブルースのレコードを聴かせたりして
啓蒙した事だと思います。そういう風に先生としての役割を充分すぎるほど果たした人なので、歌はしょぼくても、
“ブリティッシュブルースの父”のように呼ばれ、こういう風なアルバムを作れば、世界中から素晴らしいミュージシャンが集まってくるんだと思いますね。彼の事を褒めているのか、けなしているのか、なんだか良く分かりませんが。
そんなジョン・メイオールなので、個人的には、こういう風にゲストを招いたアルバムの方が楽しめます。現在のBluesbreakersのギタリストである、バディ・ホイッティングトンという髭のおっさんも良いギターを弾くと思うんですが、ジョン・メイオールのボーカルが相変わらずなので、バンドだけではどうも一本調子になりやすいと思うんですよ。なので、僕としては、このアルバムのようにゲストで変化をつけてもらった方が聴いてて楽しめるんですね。まあ、この辺は人それぞれだと思いますが。
このアルバムは
ジェフ・ヒーリーが参加した曲で始まります(リズムギターはスティーヴ・クロッパー)。この人、最近日本では忘れ去られたみたいなとこもありますが、こういったセッションアルバムのようなものがリリースされると、よく参加してますね。 ・・・他に1枚しか知りませんが(笑)。相変わらずカッコ良いギター弾いてます。白人だけど、もう生い立ちからしてメチャメチャブルースな人ですよね。その昔、彼が来日した時、観に行ったんですが、不謹慎にも “ホントは目見えてるんじゃないの~?” なんて思ってしまいました・・・。それほどギターが凄くてビックリしたんですよ。
え~、このまま1曲ずつ解説していると、日付が変わるまでに間に合わなくなりそうなので(汗)、僕の好きなギタリストが参加している曲だけ触れて行きますが、3曲目に参加しているのが、なんとZZ TOPの
ビリー・ギボンズなんです。この人は芸歴が長い割に、こういったセッションで名前を見る事は滅多にないので、ここでの参加は貴重だと思います。
1音聴いただけで彼と分かる、流石のギターを聴かせてくれてます。“
カッ”“
コッ”“
ゴッ”といった(なんて稚拙な表現なんだ~)アタックの効いた音が最高です。次の曲は、若手のホープ、ジョニー・ラングくんがギターだけで参加していて、ギタリストとしても本格派だという事を証明しています。
5曲目の“Yo Yo Man”、これが凄いんですよ! ・・・メンツ的に。
ピーター・グリーン、
ジョン・マクヴィー、
ミック・フリートウッドと、まるで60年代の
Bluesbreak-
ersの再現のようになっているんです。・・・ただし、ここでピーターが弾いているのは、アコースティックスライドだけで(エレキはスティーヴ・ミラー)、“A Hard Road” のような音を期待して聴くと、かなり拍子抜けします・・・(泣)。リズム隊の2人は、他にも、もう1曲参加しているんですが、現在のFleetwood Macのような、言ってみればPOPバンドをやっていながら、こういったブルースセッションにも参加する辺りが、なんとも素晴らしいですね。
続く “If I Don't Get Home”というマイナーブルースでギターを弾いているのは、
ゲイリー・ムーアです。まあ 彼のブルースは、“弾きすぎ”だとか “あんなのはハードロックだ”みたいによく言われたりするんですが、こういった曲でのゲイリーはホント素晴らしいです。
全盛期のピーター・グリーンを彷彿とさせる熱いギターを弾いています。・・・え~と、あと、シャノン“1985年生まれってウソだろう”カーフマン、オーティス・ラッシュといった人達は歌ってますね。オーティス流石です。早く身体治して下さい。ず~っとはしょって(笑)、ラストの曲でギターを弾くのは、クラプトン、ピーターと並ぶ、Bluesbreakersの優秀卒業生
ミック・テイラー、この人も相変わらず良いギター弾きますねぇ。少し前に出たジョン・メイオールの70歳を祝ったLIVE盤にも参加していましたね。ギターの音が“Time Waits For No One”してます。
そんなアルバムなんですよ。ブルースが好きな人やギターを弾く人は勿論ですが、ブルースはあまり聴いた事がない人にも結構お薦めだと思います。僕は正直な話、黒人のコテコテのブルースよりも、こういう風に白人が演っている ちょっとロックっぽいブルースの方が好きだったりするんですよね。聴いていて楽なので。なので、このアルバムも、ブルースを聴いた事のない人が 入門用として聴くのに結構良いんじゃないかとか思うんですけどね。