・・・え~、話は先週の土曜まで遡りますが、W杯3位決定戦が行われる数時間前、このところ全国の洋楽ファンが楽しみにしているであろう、NHK衛星放送の番組“BSサタデーライブ”が放送されました。・・・この番組を観ると、毎回見事に影響されて、そのあとにCDを聴いたり、ブログに何か書こうとしている自分が居るんですが(笑)、今回の主役は
The Who、1970年、イギリスのワイト島で行われたロックフェスティバルに出演した時のLIVE映像でした(このコンサートの模様は10年ほど前に映像作品化もされていて、当然現在ではDVD化されています)。最近彼等の映画を久々に観て、ちょっとしたThe Whoブームが起こっていた僕なんかは、“CDしか持ってないし、DVD買おうかな~”などと思っていた矢先の放映だった(ひと月ほど前から知っていた)ので、“こりゃ得したな~”とか、せこいこと考えてました(笑)。・・・で、(恥ずかしながら)今回初めてまるごと観た
“The Who Live at The Isle Of Wight Festival”でしたが、やはり彼等のLIVEはカッコ良かったです。・・・このワイト島フェスティバル、他にも沢山の人気アーティストが出演していて、中でも
ジミ・ヘンドリックスが亡くなる数週間前に行ったパフォーマンスは有名ですが、完全にお疲れモードで、明らかに覇気が無かったジミ(涙)のそれと較べると、
“Tommy”をLIVEで再現するツアーを行っていた時期のThe Whoの演奏は素晴らしくエネルギッシュで、自信に満ち溢れている感じでした。・・・もし、僕がこのフェスティバルに参戦していたら、“ジミヘンも観たけど、The Whoの方が良かったな~、あ、そうそう、明るいうちに出た
FREEもカッコ良かったわ、ボーカルが歯ボロボロでさぁ~(笑)”みたいな感想を持っていたと思います。
・・・当然、映像を観ると、CDを聴いていただけでは分からなかったことも色々発見できて、“楽しそうに演奏してるな~、メンバー(特にピートとキース)仲良さそうだな~” とか、“
キース・ムーンすげえな、バスドラの皮破ったぞ(笑)”とか、“ジョンの骸骨柄ライダースーツってどうなんだろう?これカッコ良いのか?(汗)”とか、ホント、色んなことを考えながら観てました(あまり集中していなかったとも言う・・・)。そして、これまた毎度のことなんですが、今回も彼等の使用楽器や、その使い方に目が行ってしまいました。勿論、真っ先に目が行ったのが、ギターのピート・タウンゼントで、彼は(この時期のLIVE映像/写真では御馴染みの)P-90が2つ付いた
SG Specialを
HIWATTのアンプに繋いでいたんです。・・・この頃のピートの音、LIVEに措ける音が好きだという人は結構多いと思いますが、僕もその中の1人で、スピーカーを吹き飛ばしそうな強烈なディストーションサウンドから、“まるでアコースティックギターのよう”とも言えるクリーンな音まで、1本のギターから出しているピートはホントに凄いギタリストだと思ってます。The WhoのLIVEと言うと、荒々しいパフォーマンス・・・楽器を破壊するとかそういう面ばかり強調されがちな感もありますが、ピートのこういった音色の使い分けに代表されるように、ダイナミクスのつけ方が素晴らしいと思うんですよね。これは繊細な感覚を持つ本物のミュージシャンにしか出来ない技だと思います。
・・・それでですね、このLIVEを観ていたら、1曲目からいきなりハッとしたシーンがあったんですよ。1曲目
“Heaven And Hell”は、ギターソロではファズでもかましたかのような、超ハイゲインサウンドなんですが、それが終わると、すっとクリーンサウンドに戻るんですよね。もう極端なぐらい。僕はいつもこういう音を聴いて、“ピートさすがなだ~”みたいに思っていたんですが、“ギター1本でここまで音色に変化をつけるのはどうやっているんだろう?”とも思っていたんです。・・・まあ、ソロでファズっぽい音は聴こえるんですが、使っているペダルはせいぜいそれぐらいですから(曲によってはエコーっぽい音もしますね)、“あとは右手とギター本体のボリュームだけでああやってんのかな?”と思っていたんですが、ピートはこの曲のソロが終わると
おもむろにアンプ方へ行って、アンプのボリュームも下げてるんですよ(笑)。 “えっ?そうだったの?そんなことしてたのか?”みたいに思いましたねえ。“お前はそんなことで驚くのか?当たり前のことじゃないか!”と思われる方がいるかもしれないし、それは確かにそうなんですが(汗)、ロックバンドのLIVE、それもThe Whoのように激しい演奏で有名なバンドのLIVEでそんなことが行われているとは思ってもいませんでした。・・・とりあえず僕の場合、ボリューム上げに行くことはあっても、下げに行くことはありませんでしたからね(笑)。今みたいに便利な機材が無い時代だったからこそ、ピートはこういうことをしていたんだと思いますが、こんな(言わば当たり前の)光景を観て、僕はピートを始めとするこの時代のミュージシャンが持つ繊細さ、音に対する素晴らしい拘りを感じました。やっぱり昔の人に学ぶところは沢山ありますねえ。世の中が便利になれば良いってもんじゃありませんねえ。
・・・で、
HIWATTですよ。ピートのように長いキャリアを持つ人は、ギターと同様に色んなアンプ・・・
VOXや
Fender、
Marshall、
Boogieといった様々なメーカーのアンプを使ってきた訳ですが(ピートのリクエストが元になって、マーシャルの3段積みアンプが誕生した話は余りにも有名)、個人的に、最もピートのイメージと直結するのがHIWATTのアンプなんです。HIWATTのアンプの特徴をひと言で言うならば、
“デカくて太い音はするんだけど歪まない”といった感じだと思いますが(歪むHIWATTというのもあるんですけどね)、このアンプのそういった特性が、ピートのようなギタリストにピッタリなんです。ピートのギターの特徴と魅力は、何と言っても、そのリズムプレイ・・・エディ・ヴァン・ヘイレンにも影響を与えたというリズムプレイにあると思いますが、あの歯切れの良いリズムワークに、HIWATTのようなアンプはピッタリなんですよね。・・・思い起こせば○○年前、大阪のなんとかって言うLIVEハウス(名前忘れた・笑)に出たことがあったんですが、そこは普段それほどロックバンドが出ている感じの店ではないのに、置いてあるアンプが古いHIWATTだったんです(確か
Custom 50で、
Orangeのスピーカーキャビネットに繋いであったと思いますが)。僕はその時がHIWATT初体験だったんですが、とりあえず繋いでみたら強力に歪まないんですよね。デカい音はするんだけど歪まないんです。これをアンプだけで歪ませようとしたら、バンドの他のメンバーやLIVEハウスのスタッフから間違いなく苦情が出るだろうな・・・という感じで、“いや~、参ったな~、どうすっかな~” と思いながら、試しにオーバードライブペダルを踏んでみたら、アンプがMarshallに変身したじゃないですか。・・・まあ、HIWATTを捕まえてMarshallと言うのもアレなんですが(笑)、それぐらいナチュラルに歪んでくれたんですよね。あれはMarshall初体験と同じぐらいインパクトがあって、僕は一発でHIWATTのファンになりました。
・・・とは言いながらも、僕の最愛のアンプはMarshallなんですが、あの時感じたインパクトは今も忘れることができなくて、HIWATTには一目置いているんですよね。ルックス的には良く似たこの2つのアンプ、音圧が凄いという共通点もありますが、その音色はかなり異なるもので、どちらもホントに素晴らしい特徴を持っていると思います。HIWATTがFavoriteアンプだというCharの言葉を借りれば、HIWATTは “カ行の音(カキクケコ)が良く出るアンプ”ということになりますが、これはホントその通りだと思います。気持ちの中で“ガッキーン♪”と弾いたとすると、見事にそのまま出てくれるんですよね。ピート・タウンゼンドやCharのようにコードワークを多用するギタリストに好まれるのも納得です。あとはさっきも触れた“エフェクトのり”の良さですね。これはMarshall・・・特に古いMarshallには期待できないことですからねえ。HIWATTはこれ得意ですから。そのエフェクターが持つ音を素晴らしく綺麗に再現してくれますから。・・・しかも、元々持っている音が太いので、ピート・タウンゼンドがファズを繋ごうと、僕がオーバードライブを繋ごうと(一緒にすんな・笑)、わざとらしくてチープな音には決してならないんですよね。これはエフェクターを多用するギタリストにとって凄くありがたいことで、
デヴィッド・ギルモアが長年HIWATTを愛用している理由も、ここにあるんじゃないかと思います。
・・・あと、HIWATTやMarshallといったアンプの何が良いかというと、その男らしさが良いんです。僕の好きな言葉に
“Marshallは男のアンプです”というのがあるんですが(笑)、それはHIWATTにも当てはまって、僕はこの2つのアンプが持つ男らしさ、手強さが大好きなんですよ。・・・最近のアンプ、
Soldanoや
H&K、BoogieやMarshallの新しいモデルもそうですけど、こういったハイゲインアンプは、ホント簡単に歪んでくれて、”そこそこ良い音”を出すのは大して難しいことではないんです。でも、僕はそういうのって嫌なんですよね。何か甘やかされてるみたいで(笑)。その点、古いMarshallやHIWATTは、凄く手強くもあって、弾き手に多くのものを求めるような気がするんです。やっぱりロックを演るからには、それぐらいの覚悟を持ってないと駄目ですよね。・・・などと書いたら、“最近殆どアンプにも繋がん奴が何言うとんねん”と自分でツッコミ入れたくなりましたが(笑)、オチとしては、
“僕にHIWATTのアンプを買ってくれる人を引き続き募集しています”ということです。ピート・タウンゼンドシグネチャーでも、デイヴ・ギルモアシグネチャーでも、Custom 50でも、100でも、何でも構いません。買って頂いた暁には、すっかり怠け癖がついた心を入れ替え、アンプに繋いでギターを弾くと約束します。よろしくお願いします。・・・そう言えば、HIWATTで豪快に歪ませていたバンドというと~って、もう良いですね(笑)。
追記 :Guitar Magazine8月号に、HIWATTの試奏レポート載ってましたね~。
・・・パクった訳じゃないっすよ(笑)。僕は今日(14日)、その本買いましたから。
The Who /
Live At The Isle Of Wight Festival 1970