1994年に公開されたオーストラリア映画、
“プリシラ”のサウンドトラックです。この映画は好きですねえ。以前、
“Movie Baton”が回ってきた時、“心に残る映画5本” に入れたぐらいですから、ホントに好きな映画なんです。 “ドラッグクイーンが主役のロードムービー”程度の予備知識しか持たずに映画館に観に行って、シャーリーンの
“I've Never Been To Me”に合わせて、どぎつい化粧のドラッグクイーンが口パクで歌うシーンが始まった時は、“凄い映画観に来てしまったな~”なんて思ったんですが、映画が終る頃には僕は感動に包まれていました(笑)。いや、まじで。このジャケット写真を観るだけでも、感動が蘇ります。これはオカマの夢が叶った感動的なシーンなんですよ。
・・・まあ、結構有名な映画だし、ビデオ化された時もヒットしたので、あらすじを紹介するまでも無いかと思いますが、一応簡単に説明しておくと、それまでの経験も生き方も異なる、20代、30代、50代、3人のドラッグクイーンが、砂漠の真ん中にあるリゾートホテルでショーをする為に、都会から3000キロの道のりをバスで(このバスの名前がプリシラ号、ちなみに、エルヴィスの奥さんの名前でもありますね)旅する話です。旅の途中でゲイへの偏見を受けたり、オーストラリアの先住民アボリジニと触れ合ったり、色々ある訳ですよ。彼(彼女?)らのショーはケバケバしいほどカラフルで、若い2人の会話は素晴らしく品が無いんですが、それぞれに秘密や悩みを持っていたりで、映画を観ていると妙にジーンと来たりもするんです。・・・言ってみれば、
“オカマの青春映画”みたいな感じです(笑)。・・・3人のドラッグクイーンを演じるのは、
テレンス・スタンプ、
ヒューゴ・ウィーヴィング、
ガイ・ピアースと、彼らのそれ以前やそれ以降を考えると信じられないような配役ですが、その後の姿と一番かけ離れているのは、やはりヒューゴ・ウィーヴィングでしょうね。3人の中で一番美しくないドラッグクイーンを演じていた彼が、今やエージェント・スミスだったり、エルフ族の長だったりしますから(笑)。
・・・そしてこの映画は、音楽の使われ方、サウンドトラックがまた素晴らしいんですよね。主役3人のショーというのは、冒頭にもあるように、過去のヒット曲、名曲に合わせて口パクで歌って踊るというものなんですが、選曲のセンスが最高なんです。一番多く使われているのは、70年代に流行ったディスコの曲ですが、そこにジャジーな曲やバラードの名曲が混じっているんですよね。あと、
ABBAの曲と。・・・すみません、この間から僕の中でABBAブームが起こってまして、今回“プリシラ”を取り上げたのも、その一環です(笑)。このサントラ盤には
“Mamma Mia”1曲しか使われていませんが、ABBAは映画の中でも重要な位置を占めているんです。・・・まあ、重要な位置を占めるかどうかは分かりませんが(どっちやねーん!)、この映画のヒットが、世界的なABBA再評価ブームに繋がったのは確かだと思います(ただ、映画のヒットから数年後、ABBAのドキュメンタリー番組に出演したステファン・エリオット監督は“プリシラのヒットがABBA人気を再燃させたのではなく、オーストラリアではABBAは元々凄い人気だった”と証言していました。そして、それを裏付ける(?)のが、“プリシラ”とほぼ同時期に作られたオーストラリア映画
“ミュリエルの結婚” ではないかと思います。ABBAのフィーチャー度はこちらの方が高かったです)。
・・・そんな風に、ストーリーや映像も素晴らしければ、音楽の使われ方も素晴らしい映画で、このサウンドトラックは、聴いていると劇中のドラッグショーが頭に浮かんでくるという、
映画とサントラの理想的な関係を実現したようなアルバムです。・・・また、僕のように健全なロック少年として育ち、ディスコのような不健康な場所とはまったく無縁だった者にとっては、聴いているとその頃の悶々とした気持ちを蘇らせるナイスで悩ましい選曲(笑)が成されたコンピレーション盤としても楽しめるものになっています。“こんな映画知りません”と言う人がいるとは思いたくありませんが、考えてみればもう12年も前の映画なので(汗)、若者の中にはそういう人がいるかもしれません。思い当たる人がいれば、是非観て下さい。レンタル店には置いてあると思いますけど、DVDは現在廃盤になっているみたいですね。僕も“DVD欲しいなぁ” なんて思っていたんですが、しばらくは民放で放送されたのを録画した“CM入りビデオ”(字幕なのが救い)で我慢するしかないようです・・・。