F1アメリカGPのスタートまであとわずか、日本時間午前3時から始まるレースを生で観るべきか、録画したビデオで明日観るべきか迷うところではありますが、とりあえずヤルノ・トゥルーリによってもたらされた
トヨタ初のポールポジションおめでとうございます。恐らくポールポジション狙いの軽いクルマである事が想像できますが、狙ったからと言って簡単に取れるものではありませんからね。トヨタもトゥルーリも凄いと思います。でも、ミシュランタイヤはレース距離を走っても大丈夫なんでしょうか?ラルフのアクシデントもあったし、ちょっと怖いですね。・・・という事で、今週の“今日の1曲”で取り上げるアーティストは、先週の“F1カナダGP→ブライアン・アダムス”と同じ流れで “F1アメリカGP→Cheap Trick”です。カナダと違ってアメリカならいくらでもバンドはありますが、あえてCheap Trickを選んだ理由は、説明するまでもなく、このジャケット。1996年にリリースされたこのBOXセットのタイトルも、
“Sex,
America,
Cheap Trick”なんですが、なんと言っても、星条旗カラーとチェッカーフラッグを組み合わせたかのようなこのジャケット。まるで、今日のこの企画の為にあるようなジャケットじゃないですか(笑)。そんな感じで、今日はCheap Trickの代表曲
“I Want You To Want Me”を取り上げたいと思います。
Cheap Trickがアルバム
“Cheap Trick”でデビューしたのは1977年・・・、昨日の記事の中で、“The BeatlesやLed Zeppelinのようなバンドは自分達のバンドという風には思えなかったけど、KISSやQUEEN、AEROSMITHは違った”と書きました。でも、もっと細かい事を言えば、その時点で彼等はとっくにデビューしていて、後にそれぞれの代表作と呼ばれるようになるアルバムを発表した時期だったんですよ。彼等のデビューを見届ける為には、もう少し早くロックを聴きだす必要があったんです。・・・まあ、当時の僕がこんな事を考えていたかと言うとそんな事はまったくなくて、今適当に理由付けして書いているだけなんですが(笑)、やはり
デビューの頃から知っているバンドだと更に親近感が沸くものなんですよね。向こうはそんな事どうでも良くても、実際に会ったりした時に、“デビューした時からファンです”とか言えたら気持ち良いじゃないですか(笑)。・・・で、Cheap TrickやVAN HALEN辺りは何とか間に合ったぞ・・・みたいな感じなんですよ。AEROSMITHの
“Rocks” も手掛けたジャック・ダグラスによってプロデュースされた彼等のデビューアルバムは、ハードなエッジとThe Beatlesに通じるメロディアスでPOPなエッセンスが絶妙にブレンドされた素晴らしいものだったと思います。僕なんかは、KISSより大分ハードに感じましたけどね。・・・そう言えば、デビュー当時のCheap Trickの応援団長をしていたのは、渋谷陽一だったんですよ。今のあの人からはちょっと想像できないですよね。Judas Priestの伊藤政則、Cheap Trickの渋谷陽一だったんです(笑)。
そんな渋谷陽一の努力の甲斐もあって、皆さんも御存知の通り、Cheap Trickは本国よりもまず日本で人気が爆発する訳ですが、これには曲の魅力も勿論ですが、やはり彼等のルックスがあまりにも日本人好みだったというのもあったと思います。偶然なのか故意なのか、男前2人にコミカルな2人というバランスも、レコード会社の戦略的に都合の良いものだったと思います。・・・ただ、僕はトム・ピーターソンの事はそれほどでもないと思っているんですけどね。顔だけ見れば男前なんですが、実際に見ると顔と体のバランスがちょっと変なんですよ。何か獅子舞みたいに見えてしまいました(笑)。渋谷陽一も彼の事は“もの凄く写真うつりの良い人”という風に説明していた事がありましたし。まあ、この辺は人の好みなので、これ以上書きませんけどね。・・・でも、音楽的にもこの4人のバランスは抜群で、やはり
マジックが存在する組み合わせだと思います。・・・で、そんな4人組を日本の女の子達が見逃す訳はないんですよね。彼等には勿論男性ファンも沢山いましたが、どう考えても女性ファンに圧倒されていたと思います。ホント、こういう時の女性ファンは鋭いですよね ・・・。ロビン・ザンダーの王子様のようなルックスが決め手だったとは言え(やっぱりそうなんじゃないかな?)、彼女達はCheap Trickの音楽も愛していましたからね。
1stアルバムの時点で、多くのファンを掴んでいたCheap Trickでしたが、その人気は2ndアルバム
“In Color”(プロデューサーは、トム・ワーマン)で決定的になったと思います。このアルバムは、前作でも感じられたPOPなエッセンスを更に増幅した感じであり、更にそこに収められたどの曲にも印象的なコーラスのリフレインが含まれていたりして、1曲ごとの完成度、
POPソングとしての完成度が高くなっているとも思います。そして このアルバムのA面4曲目に収められているのが、今日の1曲
“I Want You To Want Me”なんですが。この曲はまさに彼等の成長、変化を示すのに(って、俺、偉そうだ・笑)最適なものだと思うんですよ。基本的には歪んだ音一辺倒だった1stアルバムでのギターの音でしたが、この曲のイントロやソロで聴けるそれは、曲調に合わせて凄くPOPな音になっていますよね(・・・“POPな音”と書きましたが、ホントは“すっとぼけた音”と書きたいんです・笑)。・・・そんな風に、明らかにスタジオでの作業を意識してギターの音にも変化をつけてきたこの曲は、発表から30年近く経った今聴いても、まったく色褪せていなくて僕も大好きです。・・・でも、実はリック・ニールセンはこんな風にしたくなかったらしいんですよね。彼はこのアルバムに措ける
トム・ワーマンのプロデュースを気に入ってなかったらしいんです。リック・ニールセンが、“あの野郎、どれもつまんない曲にしやがって” みたいに言っているインタビューを読んだ事があるんですよ。セリフはハッキリ覚えてませんけど・・・。彼としては、やはり1stのようにハードなエッジのあるアルバムにしたかったみたいですね。
・・・で、それを証明するのが、BOXセットで初めて発表された“I Want You To Want Me”のアウトテイクなんです。この
オルタネイトバージョンはドラムで始まって、“In Color”バージョンで聴けるギターの印象的なフレーズも入っていないんです。結構ハードなギターのカッティングによるイントロなんですよね。歌のバックでもそんな感じのカッティングが続いているんです。例のすっとぼけたギターソロも当然なし。フレーズは似た感じなんですが、やはりハードなんです。これはデモバージョンではなくアウトテイクという事になっていますから、リックとしてはこういう仕上がりにしたかったんだろうと思います。それをあんな風に変えられたら、作者としてはやはり気に入りませんよね。・・・僕は気に入ってますけど(笑)。プロのミュージシャンやその周りのスタッフが、アルバムを売る為にどんな努力をしているかというのを見る事のできる興味深い例だと思います。・・・それともうひとつ、この曲には有名なバージョンがありますよね。彼等の本国での出世作となった
“At Budokan”からシングルカットされた
LIVEバージョンが。このバージョンは“In Color”バージョンに較べればかなりハードで、雰囲気的には前途の2バージョンの中間に位置するものだと思います。・・・そして、このバージョンの凄いところは、武道館に詰め掛けた日本のファン、女性ファンの熱気がこちらに伝わってくるところですね。スタジオでは、Didn't I, Didn't I, Didn't I, see you cryin'?
cryin' cryin' cryin'~♪と、エコーがかかっているところを、日本の女性ファンが生で
cryin'! cryin'! cryin'!再現しているじゃないですか(笑)。これはもうホントに凄いと思いますね。Cheap Trickの本国でのブレークを後押ししたのは、間違いなく日本の女性ファンだったと思います。僕はこれを聴くたびに、当時の女性ファンはCheap Trickというバンドのすべてを愛していたんだなぁ~みたいに思うんですよ。こんな風に素晴らしいファンが付いているCheap Trickは幸せなバンドで、いつまでも素晴らしい曲を聴かせてもらえるファンも幸せだと思います。ロビンはいつまでも王子様のようだし。
このオルタネイトバージョンの“I Want You To Want Me”、現在ではリマスターされた1stアルバム“Cheap Trick”にも収録されているみたいですね。・・・って、長いな~。何の為の“今日の1曲”なんだか・・・。