1994年にリリースされた
Alice In Chainsの7曲入りミニアルバムです。ブログを始めてまだ間もない頃、
Mad Seasonや
ジェリー・カントレルのアルバムは紹介した事はありましたが、本体のAlice In Chainsのアルバムは取り上げていないままでした。という事で、今日はこのアルバム、これから数日間続く
“Alice In Chains特集” 第1弾です。彼等の特集はBOXセットの全曲解説が終わるまで続きます。・・・いや、続けませんけどね。ちょっと言ってみたかっただけです。でも、このバンドの事はそれぐらい好きですね。彼等のアルバムには聴き終えると結構疲れてしまうものも多いので、ひょっとしたら聴いている回数はそんなに多くないのかもしれませんが、聴くたびに “良いなぁ・・・、素晴らしい音楽演ってるなぁ・・・”と思えるバンドです。深みがあるんですよね。彼等の音楽には。Mad Seasonやジェリーの記事でも同じような事書いてますけど。
この
“Jar of Flies”、2ndアルバム
“Dirt”の発表から1年も経っていない時期にメンバーが突然スタジオ入りし、曲作りから完成まで、
わずか1週間で作り上げたアルバムです(こんな事すっかり忘れてましたが・・・)。マイク・スターの後任ベーシスト、マイク・アイネズ(言うまでもない事ですが、それ以前はオジーのバンドにいました)加入後初のアルバムでもありますね。そしてこのアルバムには、
“アナザー・サイド・オブ・アリス”という邦題が付いているんですが、これは中々的を射たタイトルだと思います。このアルバムには彼等の音楽のトレードマークのひとつでもあるヘビーなギターリフを持つ曲は入っていなくて、アコースティカルで穏やかなイメージの曲が続きます。'92年にリリースされた4曲入りEP
“SAP”の延長線上にある作品と言う事もできるのではないでしょうか。“SAP”に収められた曲は1曲を除きジェリー・カントレル1人で作ったものでしたが、このアルバムのクレジットを見ると、多くの曲が複数のメンバーの共作となっています。こういったところからも、このアルバムが短期間で作られたものだという事を窺い知る事ができます。・・・僕も今日初めて窺い知ったんですが(笑)。クレジットを見たのは今日が初めてだったりして~。
アルバムは
“Rotten Apple”という、ベースのフレーズが印象的な曲で幕を開けます。いきなり林檎を腐らせている辺り、“レイン・ステイリーここにあり”という感じですね(笑)。タイトルこそ林檎が腐ってますが、この曲は歌詞も含めて凄く落ち着いた雰囲気を持っていて、僕は大好きです。このバンドの曲は、たとえヘビーなものであっても、
妙にPOPな面も持っていて、口ずさめたりするものも多いんですよね。歪んだギターは入っていませんが、Alice In Chainsの代表作のひとつと言える曲ではないでしょうか。トーキングモジュレイターを使ったギターの音も耳に残ります。 2曲目は
“Nutshell”、'96年リリースの
“MTV Unplugged”では、オープニングを飾った曲です。この曲も良いんですよね~。レインのボーカルが素晴らしいと思います。この曲の彼の声には優しさを感じます。彼等が90年代のアメリカで圧倒的な支持を得たのは、彼等には激しい曲ばかりではなく、この“Nutshell”のように
深遠で繊細な面を持つ曲があったからだと思います。
3曲目は
“Stay Away”、ストリングをフィーチャーした曲で、牧歌的なイントロで始まりますが、途中、ワウの効いたヘビーなリフも出てくる不思議な感じの曲です。こういった自由な発想や、“I Want To Travel South This Year” という歌詞に、僕は彼等と70年代のバンドとの共通点を感じたりする訳です。・・・って、今思いついて文章にしてみただけですけど。でも、Alice In Chainsというバンドには
“現代のサイケデリックバンド”みたいなところもあったと思います。続く
“No Excuses” は、彼等のレパートリーの中では異色とも言える、少し明るい雰囲気を持った曲です。“It's Alright~♪”と始まる歌詞にも、彼等にしてはポジティブなものを感じますね。この曲は
全米No.1にも輝いたんですよね。僕はこの曲でのショーン・キニーのドラミングが凄く好きなんですが、そこだけ聴いても彼等が非常にしっかりしたミュージシャンの集まりだという事が分かります。・・・そう言えば、昨日KISSの事を書きましたけど、再結成KISSのドキュメンタリーDVD
“The Second Coming”に、ショーン・キニーが登場するんですよ。“メンバーのサインをもらう”とか言って、バックステージに1人で待っているんです。少年ファンとなんら変わりません(笑)。
5曲目
“Whale & Wasp”は、ジェリー・カントレルのペンによる、インスト曲です。僕はこの曲を聴いて、ジェリー・カントレルはマイケル・シェンカーに結構影響受けているんじゃないかと思ったんですけどね。ゆったりとしたハモリのメロディや牧歌的な雰囲気に、マイケル在籍時のUFOを思い出したりするんですよ。続く
“Don't Foll-
ow”というアコースティックナンバーもそういった雰囲気を持ってます。ハーモニカがずっと鳴っていて、殆んどカントリーみたいな感じすらありますね。ジェリーはソロアルバムでもそういった曲を演っていたし、結構カントリーが好きな人なのかもしれませんね。前半部はジェリーが歌っていて、曲調が少し変化する後半にレインが登場します。僕は、この2人の声のコントラストも好きなんですよ。ラストの
“Swing On This” はタイトル通りスウィングした曲ですが、そこはAlice In Chainsなんで、普通にスウィングはしていません(笑)。アルバムの中で一番奇妙な雰囲気を持った曲ですね。彼等らしくヒネくれてると言うか。これはいかにもジャムセッションから発展した曲という感じです。
・・・とまあ、こんな感じのアルバムです。最初の方で、“彼等のアルバムには疲れるものも多い”と書きましたが、このアルバムと“MTV Unplugged”は全然そんな事はなくて、何度でも繰り返し聴けるものなんですよ。僕はその2枚を一番聴いてますかねえ。
SoundgardenやAudioslaveと違って夏でも聴けますよ(笑)。僕の個人的な意見としては、Alice In Chainsの曲って、ヘビーなものは本当にヘビーなんですが、決して暑苦しくはないんですよね。曲の持つ雰囲気やレインのボーカルが、聞き手の体温をすっと下げてくれるような感じで・・・。更に、メンバーそれぞれがしっかりした技術を持った素晴らしいミュージシャンで、その音楽性も幅広く、深いものだと思います。彼等の音楽に対して“暗くてヘビー”といったイメージを持っている方も少なくないと思いますが、一度そういう先入観を捨てて、聴いてもらいたいアルバムですね。まあ、やっぱり暗いですけど・・・。