1992年にリリースされた、元祖ラップメタルバンド
Faith No Moreの4枚目となるアルバムです。ボーカルが変態・・・もとい、天才・・・いや、やはり変態・・・変態の天才マイク・パットンに交替して2枚目となるアルバムでもあります(間にLIVEアルバムもあり)。僕はこのバンド好きでしたよ~。本当に個性があって、素晴らしいバンドだったと思います。彼等は、そのボーカルの交替を含め何度かメンバーチェンジをしていますが、やはりこのアルバムと3rdアルバム
“The Real Thing”時のラインナップが最強だったのではないかと思います。各メンバーのキャラクターがとにかく立っていて。・・・これを書き始める少し前から3rdを聴いているんですが、久々に聴いてもやっぱりカッコ良いっすわ~。
Faith No Moreのデビューは'85年ですが(今日CD棚を見ていたら、彼等のミニアルバムなんかも色々持っているのに、1stは持っていない事に気づいた・・・)、80年代後半には、凄く個性的なバンド/アーティストが出てきたように思います。その頃は ラジオやMTV向きのバンド・・・例えば、TOTOやJourneyといった所謂産業ロックバンドや、最近ではヘアメタルと呼ばれている髪を逆立てメイクをしたハードロックバンドのブームも一段落して、もっと自由な発想を持ち、自分達の個性を強調したバンドが増えてきた時期だったと思います。レニー・クラヴィッツのような、その頃流行っていた音楽には完全に逆行するアーティストが出てきたし、ハードロックの世界でもGuns N' Rosesが出てきて、お化粧バンドを吹っ飛ばしてしまいました(これはまた真似されたけど・・・)。そして、このFaith No Moreや
Living Colourといった、
ミクスチャーと呼ばれるような音楽を演るバンドも色々出てきたんです。・・・まあ、この呼び方も、彼等の演っている音楽を何と呼んだら良いのか分からないメディア側が、苦し紛れにつけたような感じですが。冒頭で
“ラップメタル”と書きましたが、これはマイク・パットンが自分達の音楽を表した言葉なんですよね。彼がインタビューでこう言っていたんです。最近の若いラップメタラーの兄ちゃん達は、Faith No Moreに感謝しないといけませんわ。彼等のようなバンドが存在しなかったら、そういう音楽も確立されていなかったかもしれません。・・・でも、マイク・パットンはそういったバンドとFaith No Moreを結びつけられる事をもの凄く嫌がっているそうなんですよ(笑)。マイクにしてみれば嫌だろうなあ、あんな個性のない連中と一緒にされるの。
Faith No Moreは、その頃出てきたバンドの中でも、一際異彩を放っていたと思います。さっきも書いたように、とにかくメンバーの個性が凄くて、言ってみれば、見事にバラバラな人達の集まりだったと思います。バークレー大学でアフリカンリズムを専攻していたという(これ、さっきブックレット読んで思い出した・・・と言うか、殆んど初めて知った・笑)ドラマーの
マイク・ボーディン、同じくバークレーで英文を学んでいたベーシスト(笑)の
ビル・グールド、眼鏡にフライングVという謎の出で立ちでヘビーなギターを弾く
ジム・マーティン、“センス抜群”という感じの印象的なフレーズを奏でる
ロディ・ボッタム(この人の名前完全に忘れてた・・・)、この4人の作り出す個性的極まりない音に、バンド加入時はまだ20歳だったという
マイク・パットンのこれまた個性的な歌が乗るんですから、もうどうしようもなく個性的な音楽が生まれてくる訳です。・・・僕はこのバンドのメンバー全員凄く個性的な音を出すので好きだったんですけど、中でもマイク・ボーディンのドラムは凄いなと思っていたんですよね。Faith No MoreがBlack Sabbathの
“War Pig”のカバーを演っているのを聴いて、マイクのドラムはこういう曲にもピッタリだし、更に個性もあって凄いなと思っていたら、今ではサバスやオジーのバンドでも叩いてますからね。こういうのって何か面白いですよね。・・・あとはやっぱりマイク・パットンですねえ。覚悟を決めて白状しますけど、僕はこの人のファンですよ。あまり言いたくないですけど(笑)。日本公演のステージで飲●パフォーマンスを披露したりする本物の変態ですが、凄い才能の持ち主だと思います。歌もホント上手いし。やはりFaith No Moreというバンドは、彼が加入した事によって凄いバンドになったと思います。
そして
“Angel Dust”・・・、タイトルからして何かヤバそうな感じがしますが、音楽や歌詞もバッチリそんな感じです。“The Real Thing”と、それに伴うツアーで、しっかり自信をつけたマイク・パットンの魅力全開です(泣)。アルバムタイトルも危ないですけど、曲のタイトルはもっと危ないですからね。
“Crack Hitler”とか、
“Jizz-
lobber”とか・・・(汗)。歌詞も妙な感じですね。中年の危機を歌った
“Mid-Life Crisis”という曲(そのまんまじゃん・笑)があったり、年老いたアル中の独り言みたいな
“RV”という曲があったり。
“Be Aggressive”は男娼の歌だって言うし・・・。かと思うと、
“A Small Victory”という中国風のメロディを持つ曲があったりするんですよね。もう滅茶苦茶ですよ(笑)。でも、どれも完成度が高くてカッコ良いんです。これはやはり、バンドのしっかりした演奏力と、マイク・パットンの歌唱力があってのものだと思います。この変態、ホントに歌上手いですからねえ。このアルバム発表後にシングルとしてリリースされた、The Commodoresのカバー
“Easy”で聴ける歌なんて素晴らしいですよ。・・・ってか、何でいきなりコモドアーズが出てくんねん(笑)。こういった謎の一面を持つ反面、ヘビーな曲は徹底的にヘビーで、最近の似非ヘビーバンドや、似非極悪メタルが裸足で逃げ出すほどです。
何たって、このバンドには本物の変態がいますから。彼等の個性とヘビーさは、それこそBlack Sabbathのようなバンドと同列に語れるものではないかという気さえします。ジム・マーティン脱退後(彼に対するイジメのような事もあったらしい・・・汗)も2枚のアルバムを発表して、3度目の来日も果たした彼等ですが(僕はこの時に一度だけ観ました)、やはりこの“Angel Dust”を発表した頃が一番強力だったと思います。
日本に来ると裏ビデオを買い漁っていたという、筋金入りの変態マイク・パットンがFaith No More加入以前からやっていた
Mr. Bungleというバンドのアルバム、僕も何枚か持っているんですが、さすがに殆んど聴かなくて(笑)、しばらくは彼ともごぶさたしていたんです。この人、変態のくせに働き者で、ホント色んな事をやっているので、いちいち追いかけるのも大変なんですよね。そしたら、先日彼のインタビューを雑誌で見かけましてね。しかも、
カラーで載っていやがるんですよ。彼のやっている
Fantomasというバンドのアルバムが日本でも発売されるという事らしいんですが。・・・で、そのアルバムのジャケットには、
奈良美智の作品が使われているそうなんです。“このジャケット可愛い~”とか言いながらそれをレジに持っていった人は、CDをかけた途端に、恐怖のどん底に叩き落されるものと思われます(笑)。