最近では長かった髪をバッサリ切って、まるで別人のようなルックスになってしまった
ケニー・ウェイン・シェパードの2ndアルバムです。1997年発表。昨年リリースされた
“The Place You're In”でも紹介すれば、このブログも少しは新譜レビュー、購入ガイドみたいになるかと思うんですが、あのアルバムはやっぱり面白くないんですよ・・・。らしくなくて。という事で、ケニーくんがケニーくんらしかった時代のこのアルバムを紹介したいと思います。この間、
ジョニー・ラングの記事の中で彼の名前を出したんですが、あまり良くは言っていなかったので、それはちょっと不公平かな?みたいにも思いまして(笑)。
18歳でデビューしたケニーくん、やはり
“スティーヴィー・レイ・ヴォーン・フォロワー”、口の悪い人からは
“スティーヴィー・レイ・ヴォーン・クローン”みたいに言われている訳ですが、それはまあしょうがないとこありますかねぇ・・・。今まで何度かこのブログで、“ストラト使いのブルース/ロックギタリストを誰でもかれでもSRVと比べるのは失礼だ”という風に書いてきたんですけど、このケニーくんの場合はそういう風に思われても仕方のないところがありますね(笑)。でも、彼の年齢的な事を考えれば、そうなるのも分かるというか、そうなるのも不自然な事ではないと思うんですよ。彼が小さい頃、ステージ袖のアンプケースの上からスティーヴィーのステージを観たという話が事実なのかは分かりませんが(笑)、スティーヴィーを観てギタリストを志した事は明らかだし、本人もそれを否定したりはしませんからね。実際、1stアルバムではスティーヴィー(が演っていた曲)のカバーを演ったりしてますしね。彼のフレージングや機材の選び方、使い方、それに彼のオリジナル曲が、スティーヴィーのそれに非常に良く似ている事から、そう呼ばれてしまうんですけどね・・・。まあ、機材の方は、ストラトを良い音で鳴らそうとすれば、ある程度は近づいていくのも仕方ないと思いますが、オリジナル曲がスティーヴィーの曲に似ているというのはちょっと厳しいです(笑)。“ブルースってそういうもんだろう?”と言われればそれも一理ありますけど、殆んど同じようなリフがあったりしますからねぇ・・・。スティーヴィーよりも、かなりロック度は高いんですが。そんな感じのケニーくんなので、個性という点ではいまひとつ弱いような気もします。
でも、彼の音はホントに素晴らしいと思いますね。
これほどストラトをストラトらしく鳴らす事のできるギタリストは、そう何人もいるもんじゃないです。僕はこの事だけでも素晴らしいと思いますね(ケニーくんがこれだけだと言っている訳ではないです)。その楽器の持つ音色を最大限に引き出すというのは、誰にでもできる事ではないですよね。日本にはいっぱいいるじゃないですか。えっらい高いギターや、もの凄いエフェクターラック、アンプを使って、しょっぼい音出してる奴等が。プロ、アマ問わず。それでそういう奴等に限って、良い音がしないのを機材のせいにしてすぐ買い替えたりするんですよね。僕はそういうのが一番嫌いなんですよ。楽器作ってくれた人に失礼だと思うんです。たとえパートのおばちゃんが流れ作業で組んだギターだとしても。“やっぱりビンテージは違う”とか言ってるプロでも出してる音は大して良くもなくて、“そんな音だったら吊るしのギターでも出るやろが!”とツッコミ入れたくなる奴いっぱいいますよね。ホント日本にはこういうのが多いんだよな。・・・すみません、話が逸れてしまいました(汗)。僕はケニーくんの出してる音はホントに素晴らしいと思います。
彼の事を“SRVクローン”と言うような人は、これぐらいの音を自分でも出してから言って下さい。・・・あ、僕も言った事になるのか(笑)。でも、そういう事分かったように言う奴は、殆んど聴いていなかったりするんですよね(笑)。誰かが言ってたから真似してみましたみたいな・・・。まあ、それぐらいスティーヴィーの音色は素晴らしくて、もの凄い影響力があったという事だと思うんですよ。ケニーくんのような少年は当然として、L.A.辺りのスタジオミュージシャンにまで影響与えましたからね。でも、そんなスティーヴィーはもういないんだから、ケニーくんに頑張ってもらうのも良いんじゃないかなとも思いますね。その昔、フランク・マリノやウルリッヒ・ロート(ウリじゃないよ・笑)といった人達も“ヘンドリックス・フォロワー”と呼ばれていたりしましたが、今ではまるで違う音楽を演ってますしね。フランク・マリノは大して変わってないか・・・。スティーヴィーだって、ブルースファンの間で
“デヴィッド・ボウイのアルバート・キング男”と呼ばれた事がありましたから(笑)。影響受けるのは構わないし、それを自分の音楽に表わすのも構わないけど、そこからどこへ行くのかが大事ですよね。
この
“Trouble Is...”は、彼のソロ名義だったデビューアルバムとは違い
Kenny Wayne Shepherd Bandというバンド名義のアルバムになっていて、バンドのメンバーも1作目とは完全に入れ替わってます(Double Troubleのリズム隊が参加している曲もあり)。新たに加わったボーカリストの
ノア・ハントの歌は中々良いと思います。この人、良い声をしたジミ・ヘンドリックスみたいな歌を聴かせてくれるんですよ(笑)。オープニング曲もちょっとヘンドリックス風であったり、
“I Don't Live Today”のカバーが入っていたりするんですが(日本版ボーナストラックの
“Voo-
doo Child”はインストにアレンジ)そういうのは得意中の得意といった感じを受けます。・・・どうもケニーくんの場合は“○○風”みたいなのが多くて、このアルバムでもやはりそんな感じだったりしますが、上手いボーカリストを得て、テキサススタイルのブルースにとらわれずに、結構色んなタイプの曲を演っています。ボブ・ディランのカバーやバラードもあったりしますから。バラードで聴けるギターソロのトーンなんてホント素晴らしいですよ。僕のFavoriteトラックは
“Somehow,
Somewhere,
Someway”になりますかね~。これがまたSRV風だったりするんだな・・・(笑)。SRVに似ているとかそういうのを別にすれば、
極上のストラトサウンドを味わえる優れたブルースロックアルバムだと思います。
・・・この間も書きましたが、僕は以前からミュージシャンとしての個性という面では、ケニーくんよりジョニーくんの方が上だと思ってきたんですが、それはやはり、ケニーくんは歌わないからというのがあったと思うんです。本人並びにレコード会社もそれに気づいたのか、はたまた“SRVフォロワー”と言われ続ける事に嫌気がさしたのかは分かりませんが、NEWアルバムでは、明らかに売れる事を意識したルックスに変身して、自らロックを歌いだしたんですよね。ルックスの方は最初誰だか分からないぐらいカッコ良く変わっていて、ジャケットを観た時、
“さすがGAPのCMに出た人は違うね”なんて思いましたが(僕はこれ観た事ないんですけどね、僕の住む土地にGAPの店はないから・・・、それを観た僕の知人は“この子供誰だ?Hansonか?ギター上手いな”と思ったそうです・笑)、肝心の音楽があまり面白くないんですよ。何か普通のロックになってしまいましてねぇ・・・。“カッチリしたレニー・クラヴィッツ” みたいな曲が多くて。Aerosmithとの仕事でも知られるマーティ・フレデリクセンが このアルバムのプロデューサーで、曲も共作しているんですが、この人が諸悪の根源だと思うんですよ(笑)。最近のエアロも全然面白くないし。カッコ良い事はカッコ良いんだけど、何度も聴こうとは思わないんですよね。売れる事も大事だと思うし、いまどきのロックミュージックを聴いている若者には、この路線も新鮮に映るのかもしれないけど、ケニーくんには こういう音楽あまり合わないと思うんです。まあ、僕としては、この
売れ線転向が失敗に終わって、再びブルースロックに戻ってきてくれる事を望みます。ジョニーくんの3rdもあまり面白くなかったんだよなぁ・・・。