THIN LIZZYやロジャー・ウォーターズバンドのギタリストとしても知られる、
スノーウィ・ホワイトのアルバムです。ブルース系のアルバム紹介も今日で3日目を迎え、一昨日はじいさん、昨日は少年と紹介してきたので、最終日の今日は(って、3日で終わるんか・笑)中堅どころのアルバムを紹介したいと思います。本来でしたら、僕がよく聴いた彼の1stソロアルバム“White Flames”か 2ndソロの“Snowy White”辺りを紹介したかったのですが、その2枚はアナログでしか持っていなくて、スキャナからはみ出ます(笑)。
という事で、あまり聴いてはいないんですが、このアルバムを・・・。
年齢的には中堅と言える彼も、キャリアはもう長いです。彼のキャリアで最もよく知られているのは、やはりTHIN LIZZYに在籍していた時期だと思いますが、それ以前にも
ピーター・グリーンのアルバムや、Pink Floydのアルバムとツアーに参加していたりするんですよね。・・・と言っても、僕も彼の名前を知ったのは、彼がゲイリー・ムーアの後釜としてTHIN LIZZYに加入した時でした。当時、スノーウィの加入を伝えるニュースには“元Pink Floydの”という説明が付いていたんですが、“へぇ~” と思って少し前の音楽雑誌を調べてみると、確かに彼の姿がPink Floydの
“The Wall Tour”のLIVE写真に確認できた事を憶えています。・・・で、僕が彼の音を最初に聴いたのは、アルバム“Chinatown”に先駆けて発売されたシングル“Chi-
natown”でしたが(という事を今思い出しましたが、我ながら結構なLizzyファンだったんですねぇ・・・)、そこに彼の本当の姿は表れていませんでした(これは勿論あとで気づいた事ですが)。Lizzy在籍時の彼は
“Chinatown”と
“Renegade”の2枚に参加し来日も果たしていますが、この時期のLizzyからは、どうしても地味な印象を受けてしまいます。“Renegade”は結構好きなアルバムなんですけどね。
その後、ちょっとしたきっかけで彼の1stソロアルバム
“White Flames”を耳にする事になるのですが、そこで聴こえた地味なギター・・・地味だけど何とも言えない味のあるギターが気になって、それをかけた某プロギタリストに“これ誰ですか?”と訊ねてみたんです。そしたら“ん?これスノーウィ・ホワイト”という返事が返ってきたんですね。スノーウィと言えば、Lizzyのギタリストというイメージしか持っていなかった僕は、“へぇ~、こんなギター弾く人だったんですか”と言うと、その人は“いや、元々
ピーター・グリーンとか好きな人やから”と返してきたんですよね。その事はどこかで読んだ憶えがあったので “あ、そうか”と答えたんですが、その頃の僕はピーターのギターなんて言ったって、ただ単に地味な印象しか持っていなかったんですよ。Lizzyの先行シングル買うような奴でしたから(笑)。でも、そのギター、スノーウィの音楽が凄く印象的だったので、そのレコードをどこで買ったかを聞いて僕も買いにいったんです。まだ国内盤は出ていなかったので。・・・阪急東中通りのLPコーナーってまだあるんですか?もうとっくにない?って、誰に聞いてんねん(笑)。・・・そして、そのアルバムで聴けるスノーウィのギターは素晴らしかった訳です。本当はこんな音楽を演りたかったんだったら、Lizzyのようなロックバンドにいる事は大変だったんだろうなぁ・・・みたいにも思いました。
彼のギターには
派手さみたいなものは全然ないと思うんですよ。勿論、Lizzyのようなロックバンドにいた訳ですから、普通のロックギターだって弾けるはずですが、彼はそういった派手なプレイには興味はないんでしょうね。もっと
1音1音大切に弾く事に、彼は情熱を傾けているんだと思います。まあ、“1音1音大切に弾く”と口では簡単に言えますが、実際にそれをやるのはそんな簡単なものじゃないと思うんですよね。長い事ギターを弾いていると、手癖みたいなものは絶対ついてくるし、ちょっと弾けるようになるとそれを誰かにひけらかしたくなるもんなんです。プロであっても、アマチュアであっても、そういうのって絶対あると思うんです。つうなブルースファン(今日もまた出た・笑)が、
スティーヴィー・レイ・ヴォーンや
ジョニー・ウィンターのようなタイプのギタリストを余り褒めないのもこういう部分だと思います(僕はこの2人が自分の技術をひけらかしているとは決して思いませんが)。そういう風に“弾かない事”、“間を生かす事”に秀でた人がブルースの達人のように言われて、つうなブルースファンにも好かれるんだと思いますが、このスノーウィ・ホワイトや、彼の師匠でもあるピーター・グリーンはまさにそういうタイプのギタリストであると思うんです。
・・・ピーターのもう一人の愛弟子ゲイリー・ムーアなんて、そのまったく逆のタイプと思われている訳ですが(笑)、今はゲイリーが所有するピーターのレス・ポールが、スノーウィとゲイリーのどちらかに譲られそうになっていたというのは有名な話です。スノーウィはその話をもらった時、既にレス・ポールを1本持っていたし(これは彼が今も所有するゴールドTOPだと思うんですが、このレス・ポールは黒のエスカッションの付いた珍しいものなんですよね)、ピーターのレス・ポールの音・・・例のフェイズアウトした音が好きではなかったので、“人には譲らずに手元に置いておくべきだ”と言って辞退したらしいですが。
・・・それでやっとこのアルバムの話なんですが、スノーウィ率いるこの
The White Flamesというトリオの音は、モロにブルースという感じではありません。そういった音楽は、彼がクマさん達と組んでいた
Snowy White's Blues Argencyというグループの方で思いっきり演っていて、The White Flamesではブルースをベースにしたロックを演っています。例えるならば、Fleetwood Macの “Black Magic Woman”にあったラテン色であったり、“Oh Well Part2”で見られたような広がりを感じさせる音楽ですね。バンドの他の2人も中々の腕達者だと思います。“こういう音楽はブルースではない” と言えば、確かにそうなんですが、僕はスノーウィの事は最高のブルースギタリストだと思うし、その人がブルースという音楽を好きであるならば、そこにブルースを感じる事ができると思うんですよね。何も形式に拘って、ひとつのところに留まる事はないと思うんです。演奏する側も、聴く側も。このアルバムでも、スノーウィのギターは完全にブルースのそれだと思うし、ブルースから発展した素晴らしい音楽を演っていると思います。あまりブルースという形式や、ジャンルに拘らずに聴いてもらいたいアルバムです。自分でも良いギターを弾きたいと思っている人にも是非聴いてもらいたいですね。・・・聴けば良いギターを弾けるという簡単な話ではないのは、僕で既に証明済みですが(笑)。