ロサンゼルスを拠点とするトリオ、
10 SPEEDが1998年に発表したデビューアルバムです。・・・が、これ1枚で、このバンドは終わったのかもしれません。バンドのHPもまったく更新されていませんし。昨日のジュリアナ・レイより、よっぽどマイナーなアーティストと言わざるを得ないですね。国内盤ライナーの冒頭を飾る
“久々に大物を予感させる怖いもの知らずのロックンロールバンドの登場だ”という言葉が空しさを感じさせます(笑)。・・・あ、帯には
“20世紀最後のロック・ヒーローの登場!!”と ありますね。レコード会社は自身満々で送り出していたようなんですけどね・・・。
レコード会社やライターの思惑は完全に外れてしまったようですが、僕はこのグループの音楽結構好きです。良いバンドだと・・・だったと思いますよ。僕の場合、そういったレコード会社の叩き文句や雑誌の新譜レビューを参考にした訳ではなくて、デビュー時に雑誌に載った彼等のインタビュー、そしてこの間も同じような事書きましたけど、バンドの写真・・・彼等の格好や使っている楽器を観て、音も聴いてみたくなったんです。ジャケット写真の
“赤いやつ”、パッと観ただけでは ちょっと何なのか分からないと思いますが、あれは古くからある
Kustomというメーカーのアンプの外装のアップ写真なんですよ。恐らく、60年代のものだと思いますが、いかにもその時代を感じさせる色合いがイカしてますよね。そういうところからも、
バンドの匂いみたいなものが分かるじゃないですか。“そんな事言われたって分かんねーよ”!という人も勿論いるでしょうけど、楽器を弾く人なら分かってくれると思います。分かりますよね?・・・まあ、Kustomではちょっとアレですが(僕も実物見た事ないし)、分かる人には分かると思うんですよ(ちょっと弱気・・・)。
そういった彼等の使用楽器からも音楽が何となく想像できたりして、確かに60年代から70年代にかけてのハードロックやグラムロックを感じさせるものであったりするんですが、決してそれだけではないし、懐古趣味という感じでもないと思うんです。アルバムのオープニングは勢いのあるロックナンバーですが、2曲目の
“It Makes Me Crazy”・・・僕はこの曲が一番好きなんですが、この曲なんて、ファルセットを使ったボーカルのメロディにカーティス・メイフィールド辺りのソウルミュージックの影響を感じるし、続く
“Sapce Queen”という曲では、Hip-Hopぽいリズムが使われていたりするんです。ボーカルとギターを担当するハッチ・ウォーカーが、コンポーザーでもあるんですが、この人の作る曲はバラエティに富んでいて、彼が今まで聴いてきたであろう音楽の影響がそこここに見られるものなんですよ。その音楽が過去に聴いてきたものの単なる物真似だったりすれば話になりませんが、誰かの影響を感じさせるものならば、僕はそれで良いと思うんですよね。
このブログの過去の記事を読んでもらえば分かると思いますが、僕が意識的に洋楽を聴き始めたのは70年代の中頃で、やはりその頃に聴いていた音楽の影響が未だに強いです。だからと言って、その頃のロックが一番だというつもりはありませんが、その時代はロックが最もロックらしかった時代だと思うんですよ。例えばジミ・ヘンドリックスやLED ZEPPELINといったアーティストは僕が最初に好きになったバンドより更に一世代前のアーティストですが、この人達が作り出した音はそれまでには無かったもので、未だに影響を与え続けているものだと思うんですね。具体的に言えば、ストラトやレス・ポールをマーシャルアンプに繋いで、圧倒的な音量と音圧でブルースから発展した音楽をプレイするといった感じ。まあ、誰が元祖であるといった話はここでは置いておきますが(なので、この件についての反論は禁止です・笑)、こういった人達の影響を自分達の音楽に出すという事は、決して恥ずかしい事でも、カッコ悪い事でもないと思うんですよね。実際、若い人達にも人気のあるRed Hot Chili Peppersはジミ・ヘンドリックスから強く影響されているバンドだし、Rage Against The MachineはLED ZEPPELINからの影響が見られるバンドでしたよね。
・・・話がかなり10 Speedから逸れてしまって、どこに向かっているのか分からなくなっていますが(汗)、僕が今こう書いたのは 別に元ネタばらしとかそういう事ではなくて(笑)、“過去の音楽からの影響を感じさせるバンドって良いですよね”という事なんです。それだけそのバンドが音楽を好きだという証拠だとも思いますから。過去のアーティストからの影響を感じさせながらも自分達の音楽を作り出した前途の2バンドなんて、ホントに素晴らしいと思います。勿論、“過去の音楽なんて関係無い!” と言って新しい音楽を作ったって良いんですけどね(でも、そういった先駆者に対する敬意も何も持たずに、流行っている音楽をただ真似してるだけのバンドには僕は何も感じません)。どちらにしろ、たかだか50年ちょっとの歴史しかない音楽じゃないですか。この10 Speedも、
過去のアーティストに対する敬意を払いつつ自分達の音楽を作ろうとしていた良いバンドだった(哀しいかな過去形・・・)と思うんです。まあ、
アルバム全体がインパクトがあるかというと、そうでもないような気がするんですが(笑)、良い曲も入っているんですよね。なので、中古屋で安く見つけたら(昨日と同じような締め方・・・)、お買い物リストに加えてみて下さい。
“It Makes Me Crazy”だけでも聴いて欲しいです(笑)。