最近では、スタンダードナンバーを歌ったアルバムを続けて発表していて、円熟期を迎えたという感もあるロッド・スチュワートの
初期の音源を集めた2枚組アルバムです。
グラムロック→
SLADE→
エディ・リーダーと続いたイギリス特集(って、いつの間に~)の最後を飾るのは、この人です。まあ、イギリスというより、エディ・リーダーの“スコットランド”で この人に繋がったんですが(ロッドはロンドン生まれだけど、ルーツはスコットランドみたいですね)。
僕がロッドの歌を初めて聴いたのがレコードだったか、テレビで観たFacesのLIVEだったか、ちょっと記憶が定かではないんですが、・・・テレビの方が先だったかな?まあどちらにしろ、最初にきちんと聴いたアルバムも
“Foot Loose & Fancy Free”(これ、言い慣れないですね、やっぱり“明日へのキックオフ”じゃないと・・・)だったので、僕が初めて聴いたロッドは、まだ彼が“俺ってセクシー?”とか言い出す前のロックンローラー然としていたロッドでした。“Blondes Have More Fun”の頃だってカッコ良かったですけど、あれはディスコでしたからねぇ・・・。とにかく、
“Do Ya Think I'm Sexy”のヒットは、それ以降のロッドのイメージを決定づけたみたいなところがありましたね。
“金髪好きのゴージャスなロックスター”みたいに。
世間一般的に、ロッド・スチュワートというと、そういうイメージを持たれてしまって、好きではない人も結構いるかもしれないんですが、
若い頃のロッドは最高でしたね。FACESは最高のR&Rバンドだったし、その前のJEFF BECK GROUPでのロッドも文句のつけようがないぐらいカッコ良かったです。第1期
JEFF BECK GROUPの
“Truth”と
“Cosa Nostra Beck-Ora”の2枚は(これらのアルバムは、JEFF BECK名義で発表されていますが、実際はJEFF BECK GROUPと名乗って活動していたみたいですね)、どちらも僕のFavoriteアルバムなんですよ。コージー・パウエルやマックス・ミドルトンを擁した第2期BECK GROUPも、ファンキーで大好きなんですが、僕は第1期の爆発力に参りますね。
“引いた奴の負け”みたいな感じで、全員がガンガンいっているあの音は最高です。・・・ただ、LIVEにおいては、ジェフ・ベックがケンカ強かったみたいで、ベックがソロを弾いているステージの隅の方で、 “やる事なさそうに佇むロッド”みたいな写真を観た事があります(笑)。ロン・ウッドなんか、れっきとしたギタリストだったのに、ベース弾かされてますからねぇ・・・。
でも、この2枚のアルバムでの
ロン・ウッドのベースは最高!
この
“1964-1969”というアルバムは、ロッドの
ソロデビューシングル“Good Morning Little School Girl”等を含む、JEFF BECK GROUP加入以前の音源や、BECK GROUP在籍中、脱退後のセッション音源を集めたものです。デビューシングルが“Good Morning Little School Girl”であるというところからも分かると思いますが(ちなみにここでベースを弾いているのは、後にZEPのメンバーとなるジョン・ポール・ジョーンズ)、このアルバム、・・・特に初期の録音におけるロッドは、完全に
R&B、ソウルシンガーといった感じです。サム・クックの
“Shake”みたいな有名な曲も聴けたりするんですが、ホントにカッコ良いんですよ。
“黒人のソウルシンガーそのまま”みたいな歌を聴かせていた当時のロッドが、まだ20歳そこそこの若者だったという事実には、驚くほかありません。
このアルバムに収録されている曲は、どれも貴重な音源と言えると思うんですが、その中でも個人的に、
“えっ?そんなのがあったんですか!”と驚いた曲があるんですよ。Disc2に収録されている
“Stone Crazy”という曲なんですけど、このバディ・ガイ作のブルースナンバーでギターを弾いているのが、
ピーター・グリーンなんですよ。実は、買う時には、この事に気づかなくて(ジャケットの裏にちゃんと書いてあるに・・・)、家に帰ってから気づいたもんだから、そりゃもう驚きました。もひとつ驚いたのは、アルバムのクレジットが間違っていた事で(笑)、ピーターは“Stone Crazy”の3つ前の曲に参加している事になっていて、その曲を聴いた時、“え~?ギター全然聴こえないじゃ~ん”と思ってガッカリしていたんですが、“Stone Cra-
zy”が始まった瞬間に、“あのギター”が聴こえてきて、“こっちだろ~”と思ったんですよ。・・・もし、僕が間違っていたら、言って下さい。こっそり修正します(笑)。
“Dancer In The Dark”等で有名な、ラース・フォン・トリアー監督の
“Breaking The Waves”(奇跡の海)という映画を観た方、またはその予告を観た方いらっしゃいますか?これ、僕の大好きな映画なんですけどね。あの映画の予告で(勿論本編でも)、ロッド・スチュワートの歌が使われていたのを覚えてませんか?・・・って、誰に話し掛けてんだ?(笑) そこで使われていたのが
Python Lee Jacks-
onというグループ(だというのを今日初めて知った、人の名前かと思ってた・・・)の
“In A Broken Dream”という曲で、これが冬のスコットランドの景色にピッタリという感じで使われていたんです。・・・う~ん、一生懸命説明しても、その画がないと、どうしようもないなぁ(笑)。とにかく、この曲とスコットランドの風景が僕の中で繋がっているんですが、この曲で聴かれるロッドの歌は、
彼のベストパフォーマンスのひとつに数えられるんじゃないかというぐらい素晴らしくて、曲も凄く良いんです。哀しい感じなんですけど。ゲイリー・ボイルによるファズの効いたギターソロも素晴らしいです。よければ一度聴いてみて下さい。映画観てくれても良いですけど(既発曲ばかりでしたが、映画のサントラも非常にブリティッシュで良かったです)。この曲が聴けるというだけでも、このアルバム(とサントラ盤)の価値はあると思います。
他にも、キース・リチャーズ、キース・エマーソン、ジェフ・ベックといった名前も見受けられますが、ピーター・グリーン以外のそういうゲストは結構どうでも良い感じに聴こえます(笑)。・・・でもまあ、ジェフ・ベックはジェフ・ベックだな。それよりも、ここで聴けるロッドの歌が本当に素晴らしいんですよ。彼が若い頃から非常にソウルフルなシンガーであった事を示す、
中々優れたコンピレーションアルバムだと思うので、ちょっと気にとめておいて下さい。2枚組だけど、結構安く買えると思います。