80年代後半から90年代前半にかけて、かなりの人気を誇ったバンド(という書き出しはちょっとアレですが・・・)、
Cinderellaが'98年に行なったツアーからのLIVEアルバムです。素晴らしいLIVEバンドであったのにもかかわらず、全盛期にはLIVEアルバムを発表する事はなかったので(ミニアルバムはありましたが)、このアルバムがCinderella
初のLIVEアルバムという事になりますね。僕はこのバンド好きでしたねぇ。今も好きですけど。・・・彼等の事はいつか書こうとは思っていたんですが、最近、Cinderella/トム・キーファーに関するコメントを2度ほど頂いたので、今がその時だと思って急遽取り上げる事にしました。“今がその時”って大そうですけど(笑)。でも、タイミングは大事です。
フィラデルフィア出身のCinderellaは、'85年にジョン・ボン・ジョヴィのバックアップを受けてメジャーレーベルと契約します。しかし、当時はボーカル/ギターの
トム・キーファー、ベースの
エリック・ブリッティンガム以外のメンバーはまだ固定されていなかったので、1stアルバムは何人かのミュージシャンの協力の下でレコーディングされました(アルバムが完成する頃にギターの
ジェフ・ラバー、ドラムの
フレッド・コウリーが加入し、ジャケットにはその4人が並んでいますが、ジェフとフレッドはジャケット以外は関係ないんですよね・笑)。そんな状況下で作られた彼等の1stアルバム
“Night Songs”(1986)は全米3位を獲得し、デビューアルバムながら300万枚のヒットを記録します。ジャケット写真の彼等は今で言うところのHair Metalバンドのような格好をしていますが、その音はストレートなR&R、硬派のハードロックであり(僕はAC/DCに似ているとさえ思った)、彼等が
本格派であるという事を示すものでもありました。そのグラマラスなルックス(と言っても、トム・キーファーは、一部では、タコチュウや林真理子に似ていると思われていたらしいですが・笑)とは裏腹に、音は硬派なCinderellaでしたが、2ndアルバムでは更に本格的なミュージシャンであるという事を世間に知らしめるのです・・・。
'88年にリリースされた2ndアルバム
“Long Cold Winter”を聴いた時は、かなり驚きましたね。レコードをかけるとまず聴こえてきたのは渋いドブロの音で、そこでまず驚き、更にアナログではB面の1曲目に入っていた、タイトル曲の
“Long Cold Winter”は、
どブルースナンバーだったんです。“BON JOVIの仲間”、“MTV向けのバンド”みたいな格好をして出てきたCinderellaは、実は想像を絶する
若年寄バンドだったんです。・・・バンドと言うより、トム・キーファーですね。彼が異常に渋好みだったんですよ。タコチュウな林真理子ですけど(涙)。・・・まあ、ハッキリ言って、Cindrellaというバンドは、
トム・キーファーのワンマンバンドであると言っても差し支えないと思います。彼以外のメンバーは個性もないし、結構どうでも良いんですよ(笑)。フレッド・コウリーなんて、2ndアルバムでも叩かせてもらってない訳ですから(代わりに叩いたのは、コージー・パウエルとデニー・カーマッシー)。・・・と言っても チームとしては良く出来ていると思うし、みんなギター回しやベース回しは上手かったですけどね(笑)。・・・あの時代、ギターを回すのが結構流行って、イングヴェイ・マルムスティーンやスティーヴ・ヴァイもやってましたけど、あれが一番上手かったのは間違いなくCinderellaでしたね。3人揃って
クルンとやってましたから。・・・まあ、そんな事はどうでも良いんですが。
そして、'90年リリースの3rdアルバム
“Heartbreak Station”では、更にアメリカのルーツミュージック・・・、カントリーやゴスペルにまで近づいて行ったCindrella/トム・キーファーでしたが、このアルバムをピークに残念ながら下降線を辿ってしまうんですよね。4thアルバム
“Still Climbing”は大きな話題にはならず、グランジの波に完全に飲み込まれてしまったんです。そしてレーベルからもドロップしたバンドは一時的に解散してしまいましたが、80年代の後半に、多くのバンドがブルースという言葉を口にするようになり、
Badlandsや
MR. BIGといったブルースをベースにしたハードロックバンド(MR. BIGの1stは結構そんな感じだったと思います)が次々と現れたのは、Cinderellaの“Long Cold Winter”というアルバムがあったからだと僕は思います。・・・トムの若年寄ぶりを示す事柄として、Cinderellaは'89年リリースのチャリティアルバム
“Stairway To Heaven/Highway To He-
ll”に、ジャニス・ジョプリンの
“Move Over”を提供、また、彼らがLIVEに於いて演奏する
“Rock Me Baby”は、ジョニー・ウィンターバージョンだったりしました。
・・・そんなCinderellaが、'96年11月の再結成ワンナイトギグを経て、本格的に活動を再開した'98年ツアーからのLIVEアルバムが、この
“Live at The Key Cl-
ub”という訳です。ハリウッドのKey Clubで2日間に渡って行なわれたコンサートを収録したものですが、オーバーダブの類は一切行なわれていないそうです。従って 抜群に良い音のアルバムではないものの、非常に生々しい音のLIVEアルバムになっています。ギターの音の違いも良く分かります(トム・キーファーはオールドギターのコレクターとしても知られてる人ですが、彼はLIVEに於いてもそれを使うんですよね。しかも投げるんですよ(笑)。って、笑い事じゃないんですが(汗)。ステージ中央でギターを持たずに歌っていたトムがギターソロを始める時、ステージ袖にいるローディが彼にギターを投げて渡すんですよね。オールドのレスポールを・・・。観てるこっちが怖くて、僕は心の中で
“やめろー!”と叫んでました)。そんなLIVE盤で、更に
Greatest Hits的な選曲がなされているので、今まで彼等の音を聴いた事のない人、かつて彼等のファンだった人、そのどちらもが楽しめるアルバムになっていると思います。
・・・何かやたらと長くなってしまいましたが、最初はこんな風に彼等の経歴を書いたりするつもりは全然なかったんですよね。昨日たまたま、今週末からCinderellaが、RATTやQuiet Riot、Firehouseを従えて
“Rock Never Stops Tour”と銘打ったツアーを始めるという事を知って、何となく書き始めただけなんですけどね・・・。でもホント、トム・キーファーのようなミュージシャンには埋もれて欲しくないですね。