この“UNZA UNZA TIME”、2度のカンヌ映画祭グランプリに輝く、旧ユーゴスラビア出身の世界的な映画監督、エミール・クストリッツァが率いるThe No Smoking Orchestraのアルバムなんですが、このバンドの音楽は
とにかく面白いです。バンドは
総勢10名の大所帯で、その音楽をひと言で表わすと、やはり国内盤CDの帯にあるように、
ロマ・ロックと呼ぶのが適当なんじゃないかと思います。
ロマ(ジプシー)音楽というと、パッと思いつくのは、ジャンゴに代表されるギター音楽/ジプシー・スウィングだったり、バイオリンやアコーディオンが入ったちょっと哀愁があって情熱的な音楽だったりしますが、このアルバムを聴いて、まず耳に入ってくるのは、
サックスやチューバといった管楽器の音です。ジプシーの楽団にも管楽器奏者がいたりするんですよね。名前や顔から判断するに、このバンドにロマの人はいないようですが、ロマ音楽にある情熱、エネルギーといったものは、見事に自分達のものにしていると思います。・・・なんか、ここまで妙に文章が硬いですね(笑)。 ちょっとこのアルバムに関する情報が少なくてですねぇ・・・、アルバムのライナーを写す訳にはいかないし・・・(笑)。
・・・あ、映画の話だ。エミール・クストリッツァの映画、僕は“Arizona Dream”を最初に観たんですが、この人の映画はどれもエネルギーに満ち溢れていて、ユーモア感覚も素晴らしいですよね。このバンドの音楽も、まさしくそんな感じなんです。
“Underground”を観た人なら、ピンときてもらえると思うんですが、あの映画に使われていた音楽のバンドバージョンみたいな感じです。
“黒猫・白猫”は サントラを担当していたのが、このバンド・・・って、観ていない人にはチンプンカンプンですよね(笑)。先のロマ音楽や、スカ(リズム的にはこういうのが目立ちます)、パンクロック、行進曲(笑)・・・と、ホント色んな音楽の融合という感じです。まさに
ミクスチャーという呼び方に相応しい音楽です。最近、日本でも自分達の音楽を “ミクスチャーです”とか言うバンドが結構いるじゃないですか。でも、そういう事言ってるバンドの大半が、単にRed Hot Chili Peppersや Rage Against The Machine のパクリだったりするんですよね(笑)。スラップベースやラップ入れればミクスチャーだと思ったら大間違いだ!
こういうのをミクスチャーと呼ぶんじゃ!
すんません、ちょっと脱線してしまいました・・・。このバンドのツアーの様子を収めた
“Super 8”という、ドキュメンタリー映画があって(勿論 監督はクストリッツァ)、僕はアルバムを聴くより先にそっちを観たんですが、そこにはメンバーの生い立ちや、人となりみたいな事も描いてあるんです。やはり、こういう東欧の旧共産圏でミュージシャンを生業にするという事は、よほどの決心がないとやって行けなかったでしょうから、各メンバーとも非常にしっかりした演奏力を持っていると思います。ドラムはクストリッツァの息子が担当していて、この人は若いので、それほど苦労もしていないかもしれませんが、チューバの人なんて色んな村の葬式(墓地)で演奏していたとか言ってるんですよ。ボーカルの人が一応リーダーらしいですが(クストリッツァは最後に加わったメンバー)、この人の場合、歌手というより役者みたいな感じです(笑)。 ヨーロッパでは結構人気があるらしくて、映画の中には、かなり大きなホールを満員にしていたり、The Clashの故
ジョー・ストラマーが飛び入りして“Police On My Back”を バンドと一緒に演奏、なんてシーンもありました。パンクロックの大御所もこのバンドがお気に入りのようでした。
格好だけのパンクより、よっぽどパンクなバンドですからね。あと、バンドのギタリストが、師匠みたいなジプシーのギタリストとセッションするシーンがあるんですが、この師匠のプレイが凄くて、非常に印象に残りました。もしバンドに興味を持ったら、
アルバムとセットで、この映画を観る事をお薦めします。
・・・冒頭で一応 “エミール・クストリッツァ率いる”と書いてみましたが、音楽的には そうでもないかもしれません(笑)。この人がミュージシャンとしてどれほど貢献しているかというと、大した事ないんじゃないかと思います。ただ、この人の映画を観れば分かるように、音楽に対するセンスは素晴らしいと思うので、そういうプロデューサー的な役割は大きいんだろうと思います。あとはやっぱり世界的な名声がある人ですから、その名前をグループ名に持ってくる場合のインパクトも大きいでしょうね。よく喋るからバンドのスポークスマンには持ってこいだし(笑)。またこの人、その独特の風貌と存在感を生かして、俳優やったりする事もあるんです(パトリス・ルコント監督の “サンピエールの未亡人”では、ジュリエット・ビノシュの相手役まで・・・)。ひとつのところに収まらないといった感じの人なんでしょうね。とにかく才能豊かな人です。