1995年にリリースされた
Slash's Snakepitの1stアルバムです。このバンドの主役スラッシュといえば、今更言うまでもなく、
Guns N' Rosesの元メンバーであり、現在は
Velvet Revolverのメンバーですが、このアルバムは、彼がまだGN'Rに在籍している時期に作られたものです。彼以外のメンバーは、ボーカルに
エリック・ドーヴァー、リズムギターに
ギルビー・クラーク、ベースに
マイク・アイネズ、ドラムに
マット・ソーラム・・・、他にもディジー・リードやテッド・アンドレアディスなど、GN'Rのサポートミュージシャンも参加しています。プロデューサーもGN'Rと同じマイク・クリンク。・・・と書いてはみましたが、この辺の事実、僕は殆んど忘れていました(笑)。マイク・アイネズがベースを弾いていた事さえ。なんたって、もう10年前に出たアルバムですから・・・。この時のギルビー・クラークがGN'Rを解雇された後だったという事もすっかり忘れてた(・・・もっとも、僕はあの人をGN'Rのメンバーだと思った事ありませんが)。
スラッシュに言わせると、これは彼のソロプロジェクトではなくバンドのアルバムという事でしたが、今回久々に聴いてみて、これはやはり、
ソロプロジェクト的なアルバムという印象を持ちましたね。個人的には。確かに他のメンバーもコンポーザーとしてクレジットされてはいるんですが、バンドとしての一体感、アルバムとしてのまとまりはそんなに無いと思います。・・・ハッキリ言うと、
ギターばかり目立ち過ぎだと思うんですよね。勿論、スラッシュのギターは目立って良いんですが、GN'Rという制約がなくなった分、弾きたいだけ弾いて、それを整理もしないで全部残した・・・といった感じを受けるんです。まあ、スラッシュ以外のメンバーの音もちゃんと聴こえてくるので、バンドのアルバムと認めてあげても良いんですが(笑)、せいぜい
セッションバンドのアルバムどまりでしょう。・・・この頃はまだ、GN'Rのメンバーでもあり、GN'Rという帰る家・・・我が家を持っていたスラッシュなので、とりあえずこちらでは、向こうではできない事を誰に(ってか、アクセルだけど・笑)遠慮する事もなく演ってみたという感じだったんじゃないですかね?向こうのミュージシャンって、インタビューでも決して正直に話したりはしないので、こういった事を指摘されても“いや、あれはバンドのアルバムだ”とか言いそうですけどね(笑)。同じメンバーでもう1枚アルバムを出していれば認めてやっても良かったんですけど、2000年にリリースされたSnakepitの2枚目
“Ain't Life Grand”は、まったく違ったメンバーで作りましたから・・・。個人的には、あちらのアルバムの方がバンドらしさを感じますね。その時はもうGN'Rからは離脱していたので、彼も腹が据わっていたんじゃないですかね?
・・・で、スラッシュのギターを別にすれば、この
アルバムの主役はやはり、エリック・ドーヴァーのボーカルだと思いますが、これを最初に聴いた時、後期
Jellyfishのギタリストであった彼が、こんな風に歌える人だというのにはちょっと驚きました。なんたって、Jellyfishのスタジオアルバムに参加して歌を披露していた訳でもなく、2ndアルバム発表後のツアーに向けてのギタリストとしてバンドに参加した人ですからね(まあ僕の場合、彼の名前なんて、このSnakepitに参加するまで全然意識していなかったんですが・・・)。さっき、これを書き始める前に、アルバムのライナーを読んでやっと思い出しましたが、40人近いボーカリストが、Snakepitのメンバーとなるべくオーディションを受けにきていて、その中にはQuierboysの
スパイクなどもいたらしいです。そして、後にManic Edenのメンバーとなる
ロン・ヤングの歌をスラッシュが気に入っていたところ、最後の最後にエリック・ドーヴァーがオーディションを受けにきて、その彼が作り出すボーカルメロディが決め手となって、見事その座を射止めたという事らしいです(こんな話も完全に忘れてたな・・・)。アルバムのレコーディング時、あまりにも激しく歌うエリックに対して、スラッシュが“お前大丈夫か?” と心配して声をかけたという話を覚えていますが、ここで聴けるエリックのボーカルは、血管がぶち切れそうなほど
テンションの高いスクリームばかりなんです。それで、僕は最初に聴いた時に混乱してしまったんですよね。“こんな歌を歌える人がJellyfishのようなPOPグループにいたのか?”みたいに。・・・この辺、以前も書いた事ですけど。このアルバムに措ける彼の歌い方は、やはり何度聴いても、
アクセル ・ローズを彷彿とさせるんですよ。まあ、エリックがアクセルを意識したという事はないと思いますが、スラッシュの作るリフに歌メロを乗せて行ったら、自然にこんな歌い方が出てきたという事なんでしょうか。
Snakepitは、このアルバムのリリース後に来日して、僕も観に行きましたが、いつものようにレスポールを弾くスラッシュと、ユラユラしたアクションで歌を歌うエリック以外の印象は残っていないんですよね。それはやはり、このアルバムがセッションの延長線上で作られたもので、フックのある曲がそれほど入っていないという理由もあるんじゃないかと思うんですが、どんなもんでしょう? 実際、コンサートで一番盛り上がったのは、GN'Rの
“My Michelle”(確かそうだったと思う)のイントロだったんですよね。・・・あとはどうだろうなぁ、僕はエリック・ドーヴァーのファンで、この文章も某グループのレビューの予告編として書いてるようなものなんですけど(笑)、彼のボーカルとスラッシュのギターは“相性バッチリ”とまではいかないんじゃないかと思います。このアルバムだけ聴いていれば、かなりカッコ良いんですが、スラッシュの演りたい音楽には、Snakepitの2代目ボーカリスト、
ロッド・ジャクソンのような男らしいボーカルの方が合うような気がするんですよね。
エリックの声は、どこかユニセックス的な響きがあるじゃないですか。“じゃないですか”と言われても、聴いた事ない人は返事のしようがありませんが(笑)。・・・更にエリックサイドから見てみても、彼が本当に演りたい音楽はこういうものでは無かったというのが、後の
Imperial Dragで証明される訳です。・・・と言っても、ここで聴ける歌も彼の音楽の一部であるし、Imperial Dragでエリックを知った人には、彼の意外な一面を知る事ができるものだと思います(ブックレットの写真も髪が凄く長くてハードロッカーみたいなんですよ。まあ、ハードロッカーな訳ですけど・・・)。勿論、スラッシュのギターを沢山聴きたいという人には、ホントたまらないアルバムだと思います。今の僕にはギター多すぎて疲れますけど・・・。ラストの
“Back And Forth Again”は、結構エリックらしさが出てる曲ですかね。