1990年にリリースされた、
ジョン・ボン・ジョヴィの1stソロアルバムです。・・・ジョン・ボン・ジョヴィですよ。BON JOVIの(笑)。“笑”って、別に馬鹿にしてるとかそういう事ではまったくないんですが、今更BON JOVIを紹介するのって、何か照れるんですよね。照れ笑いだと思って下さい。我ながら、このブログでジョン・ボン・ジョヴィのアルバムを取り上げるとは思ってもいませんでした。BON JOVIと言うと、やはりミーハーなロック、歌謡曲的なロックみたいに軽く見ている人もいると思います。そういう僕も彼等の熱心なファンではありませんが、ああいったキャッチーな曲を次々に生み出す彼等の才能はホントに凄いと思うし、バンドの演奏力の高さにも一目置いています。・・・と言っても、今日はBON JOVIの話をしたい訳ではないんですけどね。今、このアルバムを紹介するのには、ちょっとした意味があるんです。最近、日本中のロックファン、ギターファンの胸を熱くしているあの人・・・、夏にやってくるあの人・・・、そうです、
ジェフ・ベック来日記念キャンペーンの一環として、このアルバムを取り上げたのです。ファンの皆さんは当然御存知の事と思いますが、このアルバムには、ジェフ・ベックが参加しているんですよ。ほぼ全曲に渡って。ジェフ・ベックの来日が嬉しいんだったら、素直に彼のアルバムを紹介すれば良いんですが、そういう事ができない性分なんですよ ・・・。ホント、ヒネクレ者ですみません。素直になれなくて・・・by Eagles。
この
“Blaze Of Glory”は、映画
“Young Guns II”のサントラ・・・ではないんですが、サブタイトルの
“Inspired By The Film Young Guns II”が示すように、ジョンがその映画のイメージを元にして作ったものらしいです。そして、この映画のストーリーは、BON JOVIの
“Wanted Dead Or Alive”にインスパイアされて書かれたものだという話です。ホントかどうか分かりませんけど。という事で、写真の真ん中にいる小柄な人は、ジョン・ボン・ジョヴィではなくて、主役のエミリオ・エステヴェス(バートレッド大統領の息子)です。見れば分かりますか?ビリー ・ザ・キッドを主役にしたこの西部劇には、CTUに入る前のジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)や、飛行機事故で亡くなった後のリッチー・ヴァレンス(ルー・ダイアモンド・フィリップス)、オースティン・パワーズに催眠術をかけられて寄り目になった人(クリスチャン・スレーター)など、(当時の)若手実力派が数多く出演しているんですが、僕は真面目に観た事ありません。テレビでチラッと観ただけです。どうもすみません。ジョン・ボン・ジョヴィもあっさり撃たれてしまう役で一瞬出ていました。そんな映画に影響されて作った曲なので、ジョンが普段BON JOVIで演っている音楽よりも、もっと
土着的なアメリカンロックという印象を受けます。ジェフ・ベック以外の参加メンバーを紹介しておくと、ギターにダニー・コーチマー(プロデューサー兼任)、ワディ・ワクテル、アルド・ノヴァ、ドラムにジョン・クーガーのところのケニー・アロノフ、ベースにJourneyにも在籍したランディ・ジャクソン、キーボードはトム・ペティのところのベンモント・テンチという布陣です。他にエルトン・ジョンやリトル・リチャードといった大物ゲストも参加しています。売れてるって強いですね。皮肉でも何でもなく。
・・・で、ジェフ・ベックのプレイですが、これが非常に伸び伸びと演っていて、素晴らしく良いんですよね。第1期ベック・グループではロッドとの一騎打ち、第2期ベック・グループでは一応アンサンブルを考えているフリをしながら、突然歌の邪魔をするようなオブリガートを入れたりと、決してボーカリストにとってはありがたくないギタリストであるジェフですが、このアルバムでは純粋に曲を盛り上げる為にギターを弾いている感じです。バッキングトラックには関与せず、ギターソロだけを弾きに来たというのも良かったんじゃないでしょうか。アルバムからシングルカットされた
“Miracle” という曲のプロモーションビデオにも出演して、嬉しそうにサンバーストのストラトを弾いていたところからも、ジェフ・ベックがこのセッションを充分楽しんでいたと想像できます。今、“ギターソロを弾きに来た”と書きましたが、このアルバムのレコーディングでは、RATTのギタリスト、ウォーレン・デ・マルティーニを巻き込んで、こんな事もあったらしいんですよ。まずはウォーレンに一本の電話が・・・
JBJ : ヘーイ、ウォーレン?ジョンだけどー、今からジェフ・ベックがギターソロ弾きに
来るんだけど、観に来ない?
WM : うっそ!まじで?行く行く、絶対行く、今すぐ行く!
“すげ~”と、感動しながら見学していると、ジェフ・ベックの調子が上がらない・・・
JBJ : 先生、どうかされました?
JB : いや、何かアンプがどうもね・・・
JBJ : あ、そうっすか、今でも充分良い音だと思いますけどねー
WM : せ、先生、僕の持ってるマーシャル結構良い音しますけど、使ってみます?
JB : あー、そうなんだー、それじゃ、借りてみよっかなー
WM : 分かりました!合点承知之介!今から取ってきます!
・・・そして、ウォーレンとジョンは、ウォーレンの家まで車を走らせて、マーシャルを取ってきたそうです。車中では、“いや~、やっぱジェフ・ベックは凄いわ!俺、まじで感動した!鳥肌立った!帰りに絶対サインもらう!”という会話がなされたに違いありません。セリフの部分は勿論僕の創作ですが、ウォーレンとジョン、人気者2人の、まるで軽音楽部の下級生のような献身的な働きによって、ジェフ・ベックの音入れも無事に済んだのです。こんな風に、ジェフ・ベックのレコーディングを見学できたウォーレンが、コタツで鍋を一緒につついた久米宏より、ずっと羨ましくてたまりません。ウォーレンのマーシャルに満足したのか、ベック先生もホントに伸び伸びとしたソロを弾いています。このアルバムがリリースされた'90年と言うと、
“Jeff Beck's Guitar Shop”をリリースした翌年でもありますし、そのアルバムで更に高みに登った彼のプレイ(特にアーミング)が素晴らしいです。
“Justice In The Barrel” という曲のイントロはインストパートが結構続くんですが、そこでの緊張感溢れるプレイは、彼のソロ作に入っていてもおかしくないものだと思いますね。他にも、前途の
“Miracle”や、タイトル曲
“Blaze Of Glory”のソロも素晴らしいです。
“Bang A Drum”も良いですね。・・・まあ、他も全部良いんですが(笑)。普段はBON JO-
VIの音楽なんて聴かない、ジェフ・ベックファンのオジサマ達にも是非聴いてもらいたいアルバムです。来日記念盤として、紙ジャケット化もされるみたいです(うそ)。