Rhino編集による
ディオンヌ・ワーウィックのベストアルバムです。ベストと言っても、ただのベストじゃありませんよ。彼女の60年代のヒット曲、
バート・バカラック/ハル ・デヴィッドのコンビによる曲を中心に編集されたベストです。さすがRhino、目のつけどころがよろしいです。編集盤はRhinoに限りますね。収録された16曲(日本盤はボーナストラック2曲入り)
すべてがTOP40入りしているというから、凄いじゃないですか。このアルバムはもう最高でしょう。編集盤ではありますが、
“ディオンヌ・ワーウィックのベスト作”と言ってしまっても良いんじゃないでしょうか?・・・これしか持ってないんですけど(笑)。
昨日の
“Love Serenade”から、このアルバムに繋がったんですが(でも、そこで使われていた
“What The World Needs Now Is Love”は、残念ながら収録されていません)、バカラックの曲って、ホント良いですよね。まあ僕の場合、結構いい年こいてから自分の好きな曲の多くが、彼のペンによるものだと知ったんですけど、それと同じように、バカラックという名前を意識せずに彼の曲を気に入っている人も多いんじゃないでしょうか。お年寄りや子供を含めて。例えば、映画 “明日に向かって撃て”の主題歌にもなった
B.J.トーマスの
“Raindrops Keep Fallin' On My Head”(雨にぬれても)、この曲なんて、洋楽に全然興味がない子供が聴いても良い曲だと思いますよね。実際、僕も子供の頃から好きでした。他にも
“I Say A Little Prayer”や、
“The Look Of Love”など、誰がコンポーザーであるかなんて考えもしない頃から、純粋に良い曲だと思っていたものが少なくありません。バート・バカラックとハル・デヴィッドのコンビは、
最強のソングライティングチームだったと思います。“僕はヒット曲を書こうと思って曲を書いた事はない”というバカラックの台詞、カッコ良すぎですねえ。
・・・そしてディオンヌ・ワーウィック、アルバムのライナーによると(このライナーはブックレットに載っている英文ライナーの日本語訳で、非常に詳しく色々な事が書いてあるんです。Rhinoの編集盤はこういうところも丁寧で良いんですよね)、彼女とバカラックの出会いは、彼女がThe Driftersのバックアップシンガーの1人としてセッションに参加した事によるらしいです。そこにいた皆素晴らしく上手い4人の女性歌手の中で、ある種の色気のような独特な雰囲気を持っていたのがディオンヌだったらしいんです。その後、バカラックはディオンヌに自分とハル・デヴィッドの曲のデモを歌わせるようになり、ついにはディオンヌをソロデビューさせる事に成功したという話です。そして、そこからワーウィック/バカラック/デヴィッドのトリオによる快進撃が始まったんだとか・・・。う~ん、絵に書いたような女性歌手誕生の物語。
ロマンがありますねぇ・・・。何だか、僕も歌手になりたくなってきました。
歌い手にとっては、決して歌うのが簡単ではないような複雑な曲であっても、ディオンヌはすぐに自分のものにして歌う事ができたそうなんですが、彼女のボーカルは上手さばかりが目立つ訳ではなく、
凄く自然なところが良いですよね。声にしても、歌い方にしても。ディオンヌの姪のホイットニー・ヒューストンなんて、声量は凄そうだし、テクニック的にも完璧だと思うんですけど、僕はどうもああいったストロングスタイルの歌は好きではないんですよ。上手いのは分かるんだけどさ・・・といった感じで。ホイットニーは美人でもあるけど、ディオンヌだって
恐竜みたいな顔してて素敵ですよね。僕は歌に限らず、ギターでも何でもそうなんですが、ただひたすら上手い人より、こういったさり気なさみたいなものを感じさせる人が好きなんですよ。妙に肩に力が入ったような人は、どうも好きになれないんです。“この人は歌う事が好きなんだなぁ・・・”と思わせる人、“ギターが好きなんだなぁ・・・”と思わせる人が好きなんですよね(数年前、彼女が来日して、そのコンサートの模様がNHK BSで放送されてましたけど、そこで彼女は“私は歌うのが大好きだから、今日も沢山歌いますね”という風に言って、ホント色々な時代の曲を歌ってましたが、さすがに過去の曲はキーを下げたりしてました)。
このアルバムは、ディオンヌ・ワーウィックという女性歌手の瑞々しい歌を収めた素晴らしいアルバムであると同時に、
60年代POPSの黄金期を象徴するアルバムだとも思います。バカラック/デヴィッドのコンビが、どうやってこんなに良い曲ばかりを書く事ができたのか不思議になるほど、良い曲ばかり詰まっています。メロディもアレンジも素晴らしすぎます(
“Walk On By”や
“Are You There (With Ano-
ther Girl)”なんて、まさに完璧でしょう)。・・・多くの人が憧れたアメリカって、これだと思うんですよね。って、いきなり変な事言い出しましたけど(笑)。このアルバムを聴いていると、そういう時代のアメリカに住んでみたかったなぁ・・・とか、そんな事を思ったりします。今更無理なので、これを聴いて妄想している訳ですが。